2006 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄スライス培養法を用いた運動ニューロン死の検討とALS新規治療法の開発
Project/Area Number |
18790585
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 幸子 北海道大学, 大学院医学研究科, 助手 (60374328)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 脊髄器官培養 / プロテアソーム障害 / 小胞体ストレス / 脊髄間質細胞 |
Research Abstract |
1 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明 生後6日目SDラットの脊髄腰膨大から採取した脊髄器官培養をプロテアソーム阻害剤に暴露し,運動ニューロンが比較的選択的に障害されるALSモデル培養を用いて,小胞体ストレスとの関連を検討した.ウエスタンブロットによる脊髄全体の解析ではGRP78や活性型カスペース12,ATF6などの小胞体ストレスマーカーが増加しており,プロテアソーム障害はERストレスを誘導したことが明らかとなった.しかし,当教室内の共同研究者が検討したところでは,小胞体ストレス誘導剤であるツニカマイシンでは選択的運動ニューロン死は見られなかったことから,プロテアソーム障害により誘導される運動ニューロン死における小胞体ストレスの重要性は過大に評価するべきでないと考えられた. 2 骨髄間質細胞(BMSCs)による細胞療法のin vitroモデル 上記のALSモデル培養を用いて,BMSCsによる細胞移植療法のin vitroモデルを考案した.培養皿底部にBMSCsを先行して培養した後,約1cm程度上方に置かれた膜上で脊髄器官培養を行い,両者を同時に培養した.脊髄器官培養は二週間程度すると通常肉眼でわかる程のグリオーシスが見られるが,4週間培養してもグリオーシスが抑制されていたことを,肉眼的観察,総タンパク量測定,ウエスタンブロットによるGFAP量の比較などで確認した.また,白質周辺部に多数の分裂細胞(Bromodeoxyuridine取り込み陽性細胞)が出現し,これらの一部はネスチンやOX4を発現していた.脊髄は成体でも少数ながら神経幹細胞が存在していることが報告されており,外傷やALSなどの疾患で活性化することが知られているが,脊髄の環境がニューロンへの分化を抑制し,グリアへ誘導していると考えられている.今回の結果から,BMSCsは脊髄内の環境を再生に有利な方向へ変化させている可能性が示唆され,BMSCsはそれ自体がニューロンに変化しなくても再生医療の補助療法に利用できる可能性を示している.
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