2006 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病原因遺伝子プレセニリン機能障害によるシナプス変性機構の解明
Project/Area Number |
18790594
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植村 健吾 京都大学, 医学研究科, 助手 (00378663)
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Keywords | アルツハイマー病 / 認知症 |
Research Abstract |
家族性アルツハイマー病の原因遺伝子である、プレセニリン1のシナプスにおける働きに着目し、本研究期間中に以下のことを明らかにした。1)プレセニリン1はカドヘリンを神経細胞の興奮性伝達に応じて切断し、核シグナルを伝える働きがあること。2)プレセニリン1がシナプス結合に必須の細胞接着分子であるN-カドヘリンと結合し、細胞生存的なシグナルを伝える働きがあること。3)この結合の強度はリン酸化酵素であるGSKによってプレセニリン1のC末端がリン酸化をうけることで調節されていること。4)GSKによるリン酸化は、プレセニリンによるカドヘリンの切断を抑制する作用もあること。5)このカドヘリン切断は、アミロイド蛋白で神経細胞を処置することでも同様に抑制されること。以上の結果より、プレセニリン1がシナプス部において、カドヘリンと結合、あるいは切断を行うことで、シナプス結合の強度を調節し、その可塑性に寄与している可能性に加え、シナプス結合自体がプレセニリン1を介して、神経細胞生存的なシグナルを伝えている可能性が示唆された。また、アルツハイマー病において活性が上昇していると考えられるGSKは、このシグナル伝達を抑制することで病態に関与している可能性があること、また、アルツハイマー病の脳内で増加していると考えられるアミロイド蛋白も、プレセニリンによるシナプス結合の調節を阻害することで病態に関与している可能性があることが示唆された。以上の結果は、アルツハイマー病をシナプスの病気ととらえ直し、その病態と治療を探る上で重要な知見と考えられる。
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