2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18790603
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 宏昌 慶應義塾大学, 医学部, 嘱託(非常勤) (10424178)
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Keywords | 神経科学 / シグナル伝達 / 薬理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
既に分離されている神経細胞死抑制因子ADNFの受容体候補物質S1について解析を行った。 これまでのところ、S1はADNF結合タンパク質として分離され、さらに、内在性S1を特異的siRNAでノックダウンすると、ADNFが示す変異SOD1誘導性神経細胞死抑制効果がほぼ完全に消失することを明らかにしている。また、S1は他のペプチド性リガンド受容体と異なり、細胞質内に局在することおよびADNFが示す神経細胞死抑制経路にチロシンキナーゼおよびCaMKIVが含まれることがわかっている。 S1の発現解析では、S1は組織間でユビキタスに発現していること、またALSモデルマウスとその野生型リタメイトで神経組織における発現量は差のないことがわかった。 さらに具体的なシグナル伝達経路について解析を行った。その結果、S1は細胞内Ca濃度を制御するPLCγ1と高発現および内在性レベルで結合することがわかり、また、内在性PLCγ1を特異的siRNAでノックダウンするとADNFの変異SOD1誘導性神経細胞死抑制効果がほぼ完全に消失することがわかった。また、各種阻害剤を用いた検討より、ADNFの細胞死抑制経路に、CaMKKおよびSrcファミリーチロシンキナーゼが含まれることが明らかとなった。 以上の現段階の結果を総合すると、ADNFが細胞質内においてS1に結合すると、SrcファミリーチロシンキナーゼおよびPLCγ1が活性化され、PLCγ1によって惹起されたCaがCaMKK、CaMKIVの活性化を導き、最終的な生存シグナルが誘導されると考えられる。 今後は、ADNFとS1の結合がどのようにSrcファミリー・チロシンキナーゼおよびPLCγ1を活性化し下流シグナルを導くのか、具体的な神経細胞死抑制効果の活性化メカニズムを引き続き検討して行く。
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