| Research Abstract |
運動神経細胞(MNs)は代謝ストレスに対して「選択的脆弱性」を示すが,その分子機構は未解明である.選択的脆弱性の分子機構を解明することは,MNsが選択的に障害される神経変性疾患の一つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療開発には必要不可欠と考えられる.私は,この分子機構の解明を目的とした研究を行っており,平成18年度は,ラットの舌下神経MNsでは,代謝ストレスにより,グリシン放出が誘導され,その結果NMDA受容体活性が高まることを証明し報告した(EurJNeurosci 25;1748-1757,2007).平成19年度は,この結果をもとに各種MNsにおけるグリシン放出率とグリシン結合阻害による細胞死抑制に関して研究を進めた.対象としたMNsとして,ALS罹患時に舌下神経MNsと同様に障害をうけるが,障害の程度が軽い,顔面神経MNsを対象とした. 具体的には,若年ラットの急性脳幹スライスを作成し,パッチクランプ法により,局所神経回路の構造を維持した状態で,顔面神経MNsを実験的な低酸素状態に置き,抗酸化作用のあるascorbic acidやNa channel抑制効果のあるriluzoleなどの薬剤投与を行いながら,膜電位,膜電流,シナプス後電流を測定した.その結果,(1)舌下神経MNsと同様に顔面神経MNsでも,低酸素負荷に伴い,内向き電流,グリシン放出の増加が認められた.(2)一方,内向き電流,グリシン放出の増加の程度としては舌下神経MNsと比較すると軽度であった,という電気生理学的特長を証明した. 以上の結果により,MNsにおいては,代謝ストレスによりグリシン放出が促進されるが,その脆弱性には細胞間により差があることが証明された. 今後は,この結果をもとに,実際のALSモデルマウスを使用し,各MNsにおける代謝ストレスに対する分子機構解明を予定している.
|