2006 Fiscal Year Annual Research Report
SHRにおけるインスリン抵抗性遺伝子KAT-1の過剰発現及び欠損マウスによる解析
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18790612
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯塚 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 医員 (40420244)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 遺伝子導入 / SHR(高血圧自然発症ラット) / 高血圧 / 交感神経活動亢進 / 延髄吻側腹外側野(RVLM) / telemetryシステム / インスリン感受性 |
Research Abstract |
【目的】Metabolic syndromeのモデル動物である高血圧自然発症ラット(SHR)の3番染色体には血圧と体重、脂肪細胞でのインスリン抵抗性と脂肪分解障害に連鎖するQTL(quantitative trait locus)が集簇し、われわれはその原因候補遺伝子としてKAT-1(kynurenine aminotransferase-1遺伝子)を同定し、SHRのKAT-1には機能的変異(E61G)が存在することを報告してきた。一方、SHRの延髄ではKAT-1活性とその代謝産物であるキヌレン酸含量の減少がみられ、延髄吻側腹外側野(RVLM)へのキヌレン酸の選択的投与により血圧や脈拍が減少することが報告されている。本研究では、KAT-1を発現するアデノウイルスベクターを作製し、in vivoでのKAT-1のもつ生物学的機能の解析を試みた。 【方法】KAT-1およびコントロールとしてのLacZをそれぞれ発現するアデノウイルスベクターを作製し、各々の3x10^7 particlesをmicroinjection法にてSHRのRVLMに選択的に投与し、血行動態をtelemetry法にて測定した。次に、交感神経活動を評価するため、24時間蓄尿中のカテコラミン分泌を測定し、インスリン感受性の評価としてinsulin tolerance test(ITT)を行い、またRVLMへのキヌレン酸の選択的投与による血圧等の変化も調べた。 【成績】1)Microinjection法により、SHRのRVLM領域でのKAT-1の選択的な過剰発現が確認された。LacZ発現ベクターに比べてKAT-1発現ベクターを投与したSHRでは、2)血圧や脈拍の減少を認め、この傾向はラットの交感神経活動が高まる夜間により顕著に認められ、3)24時間尿中カテコラミン測定の結果ではノルアドレナリンのみならず、アドレナリン、ドーパミンも有意に低下し、4)ITTの結果ではインスリン感受性が改善する傾向が認められた。5)KAT-1を過剰発現させたSHRでは、RVLMへのキヌレン酸の投与による血圧低下効果は著しく減弱していた。 【結論】KAT-1の異常がSHRにおける高血圧や交感神経活動亢進、インスリン抵抗性などの病因の一部を成す可能性が示唆された。
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