2007 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンとニコチンによる動脈硬化進展における分子生物学的作用機序の解明
Project/Area Number |
18790615
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 努 University of Toyama, 大学院・医学薬学研究科, 助教 (00419334)
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Keywords | シグナル伝達 / 糖尿病 / 動脈硬化症 / ニコチン / α7ニコチン受容体 |
Research Abstract |
2型糖尿病やMetabolic Syndromeにおいて認められるインスリン抵抗性・高インスリン血症と喫煙はそれぞれ独立した心血管障害や脳梗塞の危険因子であり、これらは重複することでその発症の相対危険度が飛躍的に増す。インスリンの増殖作用に対するニコチンの影響を分子レベルで明らかにすることは動脈硬化進展についての予防法に対する新たな治療戦略を考える上で必要である。そこで、SDラット由来の血管平滑筋(VSMC)を用いて細胞レベルでのインスリンとニコチンによる増殖シグナル伝達を検討し、ニコチンがインスリンの増殖作用に及ぼす影響とその経路を明らかにした。 短期間のニコチン刺激、またはインスリン刺激を行うと、p44/42 MAPK, p38MAPK, STAT3のリン酸化が認められた。ニコチン前処置後にインスリン刺激を行うとp44/42MAPKのリン酸化のみに相加的な増強効果が認められた。 RTPCRにより、ラットVSMCにα2-7,α10,β1-3,δ,εのニコチン受容体(nAChR)サブタイプの発現を確認した。その中でα7nAChRがニコチンによるDNA合成(3H-チミジン取り込み)に関わることを明らかにし、そのシグナルとしてcalmodulin kinase II, Src, Shcを介するp44/42MAPKのリン酸化が重要であることを明らかにした。またその際EGFとPDGFの両受容体との交差活性化は認められなかった。 さらに、長期間のニコチン処置は細胞膜上のα7nAChRをアップレギュレーションし、その結果ニコチン再刺激時の増殖シグナルとDNA合成を飛躍的に増加させることが解明された。 以上より、反復する喫煙習慣によるニコチン摂取は、血管平滑筋の細胞膜のα7nAChRを増加させ、インスリン抵抗性状態における動脈硬化促進に関わる増殖シグナルの著しい増強を起こす可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)