2006 Fiscal Year Annual Research Report
変異AMPキナーゼを用いた代謝症候群発症モデルマウスの作製と解析
Project/Area Number |
18790629
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
岡本 士毅 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助教 (40342919)
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Keywords | 脳・神経 / ウィルス / メタボリックシンドローム / AMPキナーゼ |
Research Abstract |
視床下部は、動物個体のエネルギー代謝を自律的に調節している。視床下部AMPキナーゼは、レプチンやグルコースのシグナル分子として摂食行動を調節しているが、私はAMPキナーゼ活性を変化させ、代謝症候群発症モデルマウスを作製し、そのマウスを用いて病態解析を行うことを試みている。本年度は、活性型AMPキナーゼをコードするレンチウィルスベクターをマウス視床下部に接種してAMPキナーゼを持続的に発現させ、感染マウスの体重変動と摂食行動に及ぼす影響を調べた。雄性c57BL/6Jマウス(10-12週令)の両側視床下部室傍核(PVN)に金属カニューレを留置し、レンチウィルスを接種した後、通常食下において体重の変動を4ヶ月間調べた。その結果、シナプシン1プロモーターによって活性型AMPキナーゼを視床下部室傍核(PVN)に発現させたマウスが過食となり、肥満することが判明した。行動解析を行った結果、シナプシン1活性型AMPキナーゼ発現群では、暗期における行動量と摂食量、更に餌箱へのアクセス頻度が顕著に増加していた。また、通常食に含まれるコーンスターチの代わりに蔗糖を多く含む食餌(高蔗糖食)を与えても、活性型AMPキナーゼ発現群は過食となった。しかしこのマウスに高脂肪食を与えると、摂食量はコントロール群に比べて低下し、餌箱へのアクセス頻度も減少した。感染マウス視床下部における遺伝子発現の変動を調べると、活性型AMPキナーゼを発現したPVNにおいて、脂肪酸酸化に関連する遺伝子群の発現が上昇していた。PVN神経細胞のAMPキナーゼを持続的に活性化することで、過食と肥満を引き起こすことに成功した。さらに本研究結果から、PVN神経細胞のAMPキナーゼは、脂肪酸酸化を亢進させ、摂食行動のみならず、脂質並びに炭水化物に対する嗜好性にも調節作用を営むことが示唆される。
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