2006 Fiscal Year Annual Research Report
胚中心B細胞性リンパ腫自然発症マウスの作製と腫瘍微小環境・クローン進展機構の解明
Project/Area Number |
18790650
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
錦織 桃子 京都大学, 医学研究科, 助手 (60378635)
|
Keywords | 悪性リンパ腫 / BCL2 |
Research Abstract |
BCL2遺伝子の染色体転座が関連する胚中心型B細胞性リンパ腫の発症機構につき明らかにすることを目標に、前がん状態ともいうべきBCL2転座陽性B細胞が正常個体内に存在する場合の動態解析を行った。まずEμ-BCL2トランスジェニックマウスをCAG-EGFPマウスと交配させることで細胞をモニター可能にした上で、その骨髄リンパ球を野生型同系マウスに移植し、レシピエントマウスの脾臓細胞を用いて移植B細胞の性状につき解析を行った。フローサイトメトリーを用いた表面形質の解析では、BCL2転座陽性B細胞は濾胞B細胞への分化指向性を持ち、辺縁帯B細胞への分化は抑制されることが示された。また移植B細胞とレシピエントマウスの内在性B細胞を別々にソートしてリアルタイムPCRにより遺伝子発現解析を行ったところ、移植したBCL2転座陽性B細胞は野生型B細胞と異なる遺伝子発現パターンをとり、胚中心B細胞に特徴的な遺伝子の発現が高く、また独特の細胞環境への依存性を持つことが示唆された。今後さらに個体数を増やして解析を進める予定である。また、Eμ-BCL2トランスジェニックマウスの脾臓B細胞をin vitroで刺激し形質細胞への分化能を野生型マウスと比較したところ、表面形質および遺伝子発現の両面において終末分化の性状に差異を認め、BCL2転座陽性B細胞は終末分化が起こりにくい傾向がみられた。これらの結果より、BCL2転座はリンパ腫形成過程において、B細胞に単なる抗アポトーシス作用をもたらすだけでなく、B細胞の分化異常を引き起こし、それが特定の分化段階の腫瘍を発症するreservoirとなるのではないかという新しい仮説を立てている。次年度BCL2転座によってもたらされるB細胞の分化障害のメカニズムおよびリンパ腫形成における意義について、正常B細胞との対比に基づき研究を進める予定である。
|