2006 Fiscal Year Annual Research Report
新生仔免疫不全動物を用いたヒト樹状細胞の分化機序の同定
Project/Area Number |
18790656
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石川 文彦 独立行政法人理化学研究所, ヒト疾患モデル研究ユニット, ユニットリーダー (30403918)
|
Keywords | 樹状細胞 / 前駆細胞 / 分化 |
Research Abstract |
われわれは、これまでにリンパ球系サイトカイン共通ガンマ鎖の完全null変異をバッククロスした新規免疫不全マウス(NOD-scid/IL2rgKOマウス)をジャクソン研究所との共同で開発した。この新規免疫不全マウスは、獲得免疫系だけでなく自然免疫系も不全状態であることが確認された。さらに、幼若なマウス環境がヒト造血幹細胞の生着に寛容にはたらき、組織の発達に伴い生着した細胞の分化を促進しやすい環境を利用するため、生後48時間以内の新生仔NOD-scid/IL2rgKOマウスをレシピエントに用いた。このシステムにおいて、純化したヒト正常造血幹細胞を移植した場合、ヒトB細胞、T細胞、樹状細胞が末梢血、骨髄、脾臓において分化し、ヒトの定常状態の骨髄にきわめて近い状況を形成することが確認された。これを免疫系ヒト化マウスと呼称した。この結果は、高率な幹細胞のホーミングとそれに基づく成熟造血細胞分化を、本移植システムが支持することを示唆するものといえる。 この新規免疫不全マウスを用いたヒト幹細胞アッセイシステムで共通リンパ球系前駆細胞(common lymphoid progenitor : CLP)と共通骨髄球系前駆細胞(common myeloid progenitor : CMP)の両者を移植した。これら前駆細胞移植レシピエントの免疫組織において、リンパ球系と骨髄球系の2つの分化経路を通って、樹状細胞が分化することを確認した。これらの樹状細胞は、表面抗原の発現や形態について、ドナー造血組織である膀帯血由来のものと、特に大きな違いを有しない。また、半定量PCRによって、転写レベルでの遺伝子発現を解析している段階であるが、TLRなどの発現形式と発現量については、リンパ球系と骨髄球系で違いを認めなかった。次年度に、網羅的遺伝子解析を行なう予定である。
|