2006 Fiscal Year Annual Research Report
全胚胎仔培養を用いた胎仔造血幹細胞肝臓ホーミングメカニズムの解明
Project/Area Number |
18790663
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 大介 九州大学, 医学研究院, 特任助教授 (00426652)
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Keywords | 血液 / 発生 / 肝臓 / 分化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マウス胎生期肝臓造血以前に造血活性がある卵黄嚢、大動脈一中腎一生殖隆起(AGM)領域で発生した造血細胞が、血流を介して、いつ、どのように肝臓へホーミング(移動・定着)し、どのようなニッチを構築しているか解明する事である。研究計画にのっとり全胚胎仔培養装置の導入を試みたが設置スペースに制限があり、導入が遅れた。また、オランダより供与されたSca-1 GFP Tgマウスが感染していたためクリーニングを行い、本マウスの使用開始が遅れた。よって今年度は以下の実験を行った。 1.造血幹細胞(HSC)クラスターの免疫染色 胎齢10.5日目AGM領域において、造血幹細胞は集塊を形成し、あたかも大血管から出芽するかのような像が認められる。これらはHSCクラスターと呼ばれている。HSCクラスターにおける接着因子の発現を免疫染色で検討したところ、過去の報告にあるように、CD31、CD34、VE-Cadherinが陽性だった。N-Cadherin、β-cateninに加え、肝臓へのホーミングに重要と考えられているβ1-integrinの発現も確認出来た。以上の結果より、HSCクラスターは様々な接着因子によりその形態を保持している事が示唆された。 2.胎仔血流中血液細胞と肝臓細胞のFACS解析' 胎齢11.5日目より肝臓において造血細胞が顕著に認められるようになる。胎齢10.5日目に認められるHSCクラスターは胎齢11.5日目までに消失する。よって、HSCクラスターが血流へ放出されて肝臓へホーミングするのはこの間に行われる。そこで、胎齢11.5日目胎仔より血流中の循環している血液細胞と肝臓の細胞を用いてFACS解析を行った。血流中血液細胞において、赤血球を反映するTer119(+)細胞はその0.9%がβ1-integrinを発現し、HSCを反映するCD45(+)c-Kit(+)Sca-1(+)細胞はその96.8%がβ1-integrinを発現していた。一方、肝臓細胞においては、Ter119(+)細胞はその86.4%がβ1-integrinを発現し、CD45(+)c-Kit(+)Sca-1(+)細胞はその94.9%がβ1-integrinを発現していた。肝臓凍結切片においてもβ1-integrinはubiquitousに発現し、FACSの結果と一致した。以上の結果より、胎齢11.5日目において、β1-integrinはHSCに発現し肝臓のホーミングに関わっている事が示唆された。また、β1-integrinは細胞を肝臓内に保持するために必要で、β1-integrinを発現していない赤血球は効率良く循環できるようになっていると推測された。
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Research Products
(4 results)