Research Abstract |
本研究の目的は,本邦でのセリアック病の頻度および合併症について明らかにすることである。グルテン摂取により誘発される本疾患は,海外では健常者の300人程度に1人の割合で潜在的な患者が存在し,抗トランスグルタミナーゼIgA抗体(TTGIgA)検査は感度99%,特異度96-99%である。本邦では,一般臨床の場においてまれな疾患と考えられているが,セリアック病が原因の庖疹状皮膚炎や小脳失調症が本邦でも報告されている。われわれは,本邦で始めてのセリアック病に関連した悪性リンパ腫症例を治療し,英文誌に報告したのち,本疾患に関する研究を開始した。当科受診患者700人においてレトロスペクティブに血清TTGIgA値を測定した。陽性症例は20例で,典型的なグルテン過敏症を5例に認めた。平均年齢は53歳,受診からの生存期間は52ヶ月で,2例は内視鏡的に本症と病理学的に診断された。生存者は1例のみであった。TTGIgA陰性例にはグルテン過敏症例を認めなかった。合併症としてセリアック関連の非ホジキンリンパ腫が2例認められた。以上から,TTGIgAはわが国でも本症のスクリーニングに有用であると考えられ,非ホジキンリンパ腫は本邦でも特記すべき合併症であった。現在,多施設共同で,プロスペクティブにTTGIgAの測定を開始し,全国10数施設の参加がある。また,当施設で新たに診断されたセリアック病の患者に対し,当院栄養科と共同でグルテン制限の介入を行っている。以上の趣旨を,日本内科学会,日本血液学会にて報告し,ホームページにて情報提供中である。セリアック関連悪性リンパ腫症例の二例目の症例報告が英文誌に受理され,TTGIgA検査の結果を現在投稿中である。海外からのセリアック病患者の本邦渡航にあたり,問い合わせが複数回有り,日本語の独自のマニュアルを作成,安全な旅行過程に貢献した。
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