2007 Fiscal Year Annual Research Report
葉酸受容体βを介した葉酸の細胞内輸送機構の解明と抗炎症作用を示す葉酸誘導体の開発
Project/Area Number |
18790687
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永井 拓 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (90363647)
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Keywords | マクロファージ / 関節リウマチ / 葉酸誘導体 |
Research Abstract |
葉酸受容体にはαとβの二種が存在し、αは上皮系のがん細胞で、βは急性骨髄性白血病や単球由来の細胞で発現する。上皮系のがん細胞は葉酸受容体αを介して葉酸を取り込み、細胞増殖のための核酸合成などに利用する。しかしながら増殖性を示さないマクロファージにおける葉酸の機能については殆ど明らかとなっていない。 これまでに、申請者は葉酸受容体β発現細胞を用い、葉酸の取り込みに伴う炎症反応への影響を検討したところ、高濃度葉酸含有培地において葉酸受容体β発現細胞は非発現細胞に比べ、mRNA合成量、5-メチルテトラヒドロ葉酸量、一酸化窒素量の増加を確認した。当該年度では葉酸依存的な炎症反応を抑制する葉酸誘導体の探索を行った。その結果、10位が修飾された誘導体を得た。しかしながら、この葉酸誘導体が示す葉酸結合阻害能は先に申請者によって合成した抗炎症作用を示す葉酸類似物(10がニトロ化した葉酸誘導体)に比べて、4倍以上の濃度を要することから(IC50=150nm以上)、リード化合物の出発物質として不適格であることが判明した。そこで、10-ニトロ葉酸を用いた葉酸阻害剤の開発を行った。特に葉酸取り込み経路(リサイクルエンドソーム)に注目し、既に米国FDAで認可されている生物毒素である遺伝子改変型緑膿菌毒素(PE38)とカップリングを行った。具体的には10-ニトロ葉酸の23位のカルボキシル基をEDC-NHSにて活性化させ、PE38と結合させた。 得られた10-nitro-folate-PE38は、約120μg/mlの濃度において葉酸受容体β発現細胞の細胞死を誘導させた。さらに、この活性は葉酸に対する結合阻害能をも保持していた。以上の結果より、葉酸誘導体10-nitro-folateは葉酸拮抗阻害剤としての機能を持つだけでなく、ドラッグデリバリーシステムの候補分子としても有用であることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)