2007 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性脱髄疾患モデルにおける末梢神経病態の解明と治療法の開発
Project/Area Number |
18790715
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下野 九理子 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (60403185)
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Keywords | 脱髄 / Krabbe病 / ランビエ絞輪 / 再髄鞘化 / 骨髄移植 / シュワン細胞 / 末梢神経 |
Research Abstract |
<研究の目的> 申請者は遺伝性脱髄疾患Krabbe病の現在唯一の治療法である、骨髄移植が中枢神経病変に対しては有効であるにも関わらず、末梢神経病変が改善しない、あるいは骨髄移植後さらに進行することに着目し、この病態解明を目的とした。 <研究成果> Krabbe病のモデルマウスであるTwitcher(TW)の末梢神経での脱髄後の再髄鞘化においてはシュワン細胞と軸索の相互関係に変化が見られた。すなわち、脱髄によってミエリンの脱落と跳躍伝導に必要なRanvier絞輪の構造は失われる。髄鞘形成細胞である、シュワン細胞は再び、軸索にミエリンを巻こうとするのであるが、その際、脱髄に伴う炎症性サイトカインによって増殖したシュワン細胞は過剰発現し、それらが、正常の髄鞘形成を妨げてしまう。 (1)骨髄移植後のTWの坐骨神経の電子顕微鏡において脱髄によって不完全になったRanvier絞輪構造の上に余剰のシュワン細胞の突起が重なり、機能的に回復しえない像を見いだした。 (2)さらに免疫組織学的手法を用いて、Ranvier絞輪の周囲のチャンネル構造物である、Na^+,K^+,Neruexin IV/Casper/Paranoidin(NCP-1)を調べたところ、高度な脱髄を伴うTWのみならず、骨髄移植により、脱髄を抑え、再髄鞘化の段階に入っているTWにおいてもいずれの構造も正常なチャンネルを形成していなかったことを発見した。 <研究の意義> これらの結果は脱髄の程度を抑えることのみならず、炎症性サイトカインによってシュワン細胞が異常増殖することを防ぐことが末梢神経の機能的回復には不可欠であることを示すものであり、今後の治療戦略の鍵となる。
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