2006 Fiscal Year Annual Research Report
発達期ヒト脳におけるDセリンとNMDA受容体の変化とてんかん原性獲得に関する研究
Project/Area Number |
18790717
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
杉浦 千登勢 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (90325027)
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Keywords | 病理 / 脳・神経 |
Research Abstract |
脳の内在性D-セリンはグルタミン酸興奮毒性の発現を調節する因子として注目され、脳組織ではグリア系細胞に多く局在することが報告されている。難治性てんかんを呈する脳形成異常では、balloon cell (BC)と呼ばれる異型細胞が出現する。現在までBCの生物学的意義は明らかでないが、近年、BCがグリア系細胞に類似するとした報告が見られてきた。これらよりヒト脳組織におけるDセリンの動態を明らかにすることは、痙攣原性獲得に関連したBCの役割を解明するために有要であると考えた。本年は、手術時に研究目的の組織使用に関する合意の得られているてんかん合併症例(2〜45歳;N=10)について、異型細胞由来を明らかするための研究を中心に行った。Fibroblast growth factor 2(FGF-2)は、ヒト脳において発達期から成人期を通して発現し、出生後はアストロサイトを中心に発現すことが知られていることから、今回の抗FGF-2抗体を用いた免疫組織化学染色での検討を行った。結果は、FGF-2の発現はBCでみとめたが、dysplastic cytomegalic neuron (DCN)では見られなかった。さらに、BCでは細胞質および核での発現がみられ、この染色態度はアストロサイトに類似していた。以上の結果は、異型細胞の一部であるBCがグリア系細胞としての性質を有することを示唆する結果と考えられた。近年、中枢神経系ではグリア系細胞が、グルタミン酸調節異常を介しててんかん原性に関与する可能性が報告されており、今後、てんかんを呈する脳組織におけるD-セリンの発現分布および生物学的意義を検討する上で重要な結果であると考えられた。尚、抗D-セリン抗体のパラフィン包埋ヒト脳切除切片での免疫組織化学染色の条件は現在調節中であり、平成19年度での検討では使用可能であると予定している。
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