2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18790742
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Research Institution | The University of Shimane Junior College |
Principal Investigator |
籠橋 有紀子 The University of Shimane Junior College, 健康栄養学科, 助教 (30369756)
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Keywords | 1型糖尿病 / 治療 / 顕性糖尿病 / 食餌環境 / ハネムーン期 / 必須脂肪酸 |
Research Abstract |
【研究の目的】ヒト1型糖尿病は、遺伝素因に環境因子が作用して起こる自己免疫性炎症により、膵臓ラ氏島が破壊されて発症する。インスリン分泌細胞であるラ氏島B細胞は、総数が最初の約10%まで減少すると顕性糖尿病が発症すると言われ、発症早期には尿糖の陽性陰性が繰り返し訪れる「ハネムーン期」が存在する。このハネムーン期に残存したB細胞からの内因性インスリン分泌を保持することは、その後の病態および生存日数に大きな影響を及ぼす。B細胞が完全に消失し、内因性インスリンの枯渇が生じた場合、外来インスリンの頻回注射なしには生きられず、短期間に死亡する。本研究では、炎症性疾患を修飾するとされている食物中の必須脂肪酸の比率(n-6/n-3)が、顕性糖尿病発症早期において、個体の病態および生存率にどのような影響を及ぼすかについて、1型糖尿病モデル動物のnonobesediabetic(NOD)マウスを用いて検索した。 【本年度の研究実施状況】疫学調査に基づいて作成した、必須脂肪酸比率の高い欧米型食餌と低い日本型食餌の2種類を、NODマウスの顕性糖尿病発症後に摂取させ、その後の病態を比較検討した。 【今年度の結果および考察】必須脂肪酸比率の高い欧米型の食餌を摂取させて顕性糖尿病を発症したNODマウスに、継続して欧米型の食餌を摂取させた結果、発症後の体重は急激に減少し、尿糖も改善されなかった。一方、顕性糖尿病発症後早期に日本型の食餌を摂取させた結果、発症後の体重減少が抑制され、尿糖改善の傾向がみられた。またそれに伴い生存率が上昇し、生存臼数も欧米型の食餌を続けた群の約3倍から6倍まで延長した。発症後の膵臓の組織像について検討した結果、欧米型を継続して摂取した個体の死亡する直前における膵島は消失し、リンパ球の浸潤自体も消失していた。一方、顕性糖尿病発症後直ちに日本型の食餌を摂取させ、生存日数が延長した個体では、膵管の近くに膵島が観察された。以上より、顕性糖尿病発症後早期のハネムーン期に食餌中の必須脂肪酸比率を低く抑えることにより、生存日数が延長し、病態の改善を促す可能性が示唆された。
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Research Products
(10 results)