2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18790742
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
籠橋 有紀子 The University of Shimane Junior College, 短期大学部・健康栄養学科, 助教 (30369756)
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Keywords | 1型糖尿病 / 必須脂肪酸 / 食餌環境 / 顕性糖尿病 |
Research Abstract |
【目的】ヒト1型糖尿病は、遺伝素因を持つヒトに何らかの環境因子が作用して起こる自己免疫性炎症により、膵臓ラ氏島(以下、膵島とする)が破壊されて(膵島炎)発症する。本研究では、環境因子の中でも栄養に着目し、ライフステージを通じて摂取する必須脂肪酸比率の相違が1型糖尿病発症率に及ぼす影響についてモデル動物のnonobese diabetic (NOD)マウスを用いて総合的に検討を行った。【方法】マウス用通常飼料をもとに、炎症性疾患を修飾するとされている必須脂肪酸比率の異なる3種類の食餌(n-3食・普通食・低n-3食)を作成した。各々をNODマウス妊娠母獣に摂取させ、NODマウスの顕性糖尿病発症までの病態に及ぼす影響を、膵島の発生、膵島炎発症時期・炎症程度の観察、生後40週齢までの顕性糖尿病発症率の計測、および糖尿病発症のマーカーとして用いられるインスリン自己抗体の測定を行い検討した。【結果・考察】母獣の血中および母乳中の脂肪酸は、食餌の脂肪酸比率を反映した。妊娠18日目、生後2、4、6週齢と膵島数は増加していたが、生後の週齢が進むにつれ、n-3食を与えた群において新規に発生する膵島数が多い傾向が観察された。膵島炎の発症時期については、各群の有意な差は無かったが、生後6週齢より膵島炎の発症程度に差が認められ、n-3食を与えた群は、普通食・低n-3食の群と比較して有意に膵島への炎症程度が抑制された。また、IAAの出現と顕性糖尿病の発症は、胎児期・乳幼児期において低n-3食を与えた群では誘導され、n-3食を与えた群では抑制されることが示唆された。以上の結果から、胎盤や母乳を介して摂取する必須脂肪酸比率が、仔の1型糖尿病発症過程と発症率に影響する可能性が示された。したがって、胎児期および新生児・乳児期の両時期において摂取する必須脂肪酸比率が、膵島の発生や病態進行に影響を及ぼし、1型糖尿病の病態に影響を与えることが示唆された。
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Research Products
(4 results)