2006 Fiscal Year Annual Research Report
上皮組織が産生する殺菌物質のケラチノサイトに対する作用
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18790809
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
ニョンサバ フランソワ 順天堂大学, 大学院医学研究科, 講師 (60365640)
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Keywords | ケラチノサイト / ヒトβ-デフェンシン / Cathelicidin LL-37 / サイトカイン・ケモカイン / 遊走能 / 増殖 / 自然免疫 / 皮膚疾患 |
Research Abstract |
最近、上皮組織由来殺菌物質の中で、強い抗菌作用を持つ殺菌ペプチドであるヒトβ-デフェンシン(hBD)とcathelicidin LL-37が注目されている。hBDとLL-37が創傷と数多くの皮膚疾患において多量に発現していることが報告され、創傷治癒とこれら皮膚疾患の病態にhBDやLL-37が関与する可能性が示唆されている。また、ケラチノサイトが創傷と皮膚疾患の病態に関与していることから、hBDやLL-37がケラチノサイトに作用する可能性があると考えられる。報告者は、hBDやLL-37がケラチノサイトのIL-18変生を誘導することとそのメカニズムを最近明らかにした。しかしながら、これらのペプチドがケラチノサイトに作用し、創傷治癒と皮膚の恒常性に対する効果の詳細な検討はなされていない。そこで、hBDやLL-37のケラチノサイトに対する作用、創傷治癒とそのメカニズムについて検討した。 その結果、hBD-2,-3,-4とLL-37がG蛋白とホスホリパーゼCの経路を介して、ケラチノサイトのサイトカインやケモカイン(IL-6,IL-10,IP-10,MCP-1,MIP-3aとRANTES)のmRNA発現と蛋白産生を誘導した。一方、hBD-1の作用はなかった。また、hBD-2,-3,-4とLL-37がケラチノサイトの遊走と増殖を有意に惹起した。さらに、in vitro scratching assayを行ったところ、これらのペプチドが創傷面の治癒を促進することがわかった。hBDとLL-37の作用メカニズムを調べるために、上皮成長因子受容体(EGFR)とSTATファミリー分子の役割を調べた。その結果、hBD-2,-3,-4とLL-37がEGFR, STAT1とSTAT3のリン酸化を誘導し、さらに、これらの分子を阻害することによって、hBD-2,-3,-4とLL-37によるケラチノサイトの遊走と増殖が抑制された。よって、hBDやLL-37は、感染部位において殺菌作用を示すだけではなく、ケラチノサイトのサイトカインやケモカインの産生を誘導し、さらに、ケラチノサイトの遊走と増殖を促進することによって傷治癒、皮膚の恒常性と自然免疫に関与していると思われる。
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Research Products
(1 results)