2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内輸送障害によるてんかんのERストレス仮説の構築
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18790820
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
朱 剛 弘前大学, 医学部, 助手 (80400133)
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Keywords | てんかん / PRIP / AP3B / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本研究では中枢性けいれん疾患の病態機序を解明するために、GABA受容体γ2サブユニット及びイノシトール3リン酸(IP3)の輸送蛋白(PRIP-1)の遺伝子ノックアウトマウス(PRIP-1KO)とGABAのシナプス小胞への再取り込み蛋白の輸送蛋白であるアダプター蛋白複合体のF3Bサブユニット(AP3B)遺伝子ノックアウトマウス(μ3BKO)を用い、神経伝達機能変化と行動学的変化を検討した。μ3BKOが15週齢以降に80%以上の頻度で自発性けいれんを呈した。μ3BKOの自発性けいれん発現機序に、海馬CA1領域のシナプス小胞の形態変化及び成熟不全、シナプス小胞局在型GABAトランスポーター(vGAT)の減少によりGABA遊離量の低下、及びこれらの変化による嗅内皮質から海馬への入力経路の一つであるtemporoammonic pathwayの興奮性伝播亢進が判明された。一方、PRIP-1KOは8週齢以後に自発性けいれんが出現し、脳波上で持続性(約30秒)の高振幅棘波群発および多棘波-徐波複合を呈した。光学顕微鏡を用いたPRIP-1KOの組織学的変化は確認できなかったが、けいれん発作後の海馬CA3領域の神経細胞変性が確認された。神経伝達物質遊離解析では、PRIP-1KOとWild間の海馬グルタミン酸の基礎遊離及びK^+刺激性遊離の変化は認められなかったが、PRIP-1KOのGABAの基礎遊離及びK^+刺激性遊離はwildよりも有意に亢進した。PRIP-1KOのGABA基礎遊離及びK^+刺激性遊離亢進はIP3受容体阻害薬により有意に抑制された。この結果から、PRIP-1KOのGABA遊離亢進はIP3結合・輸送機能の障害に起因するものと考えられ、PRIP-1KOの自発性けいれん発現機序にIP3受容体の機能障害が関与していることが示唆された。以上より、細胞内蛋白の輸送障害が新たな中枢性けいれん疾患の病態に寄与している可能性が示唆された。
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