2006 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病患者の脳機能解明とこれに抗うつ薬がもたらす作用に関する機能的MRI研究
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18790852
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
八幡 憲明 日本医科大学, 医学部, 助手 (70409150)
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Keywords | 気分障害 / 抗うつ薬 / 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 / フルボキサミン / 機能的磁気共鳴撮像法 / 薬理学的fMRI研究 / 注意機能 / ストループ課題 |
Research Abstract |
本研究は、うつ病における脳内神経回路の異常と、同疾患から回復する過程で起こる経時的な変化、および背景に存在する薬物の脳内動力学を、機能的磁気共鳴撮像法(fMRI)によって評価することを目的とした。これを明らかにする上では、比較対象として健常者の認知機能を精査することが重要であるため、本年度は精神疾患への既往歴がない健常人を対象として、注意機構の神経基盤をfMRIによって精査した。また、これが抗うつ薬の影響下で如何なる修飾を受けるか定量的に検討する必要があるため、代表的な選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるフルボキサミンを服用した場合の脳活動の変化も併せて検討した。被験者は健常男性13名(平均年齢29歳)とし、各人に対し最低2週間の間隔を空けて計2回の検査を実施した。毎回の検査でフルボキサミンまたは乳糖(プラセボ)が無作為に割り付けられ(一重盲検試験)、2回の検査を通して双方の薬物の影響下での脳活動が記録された。被験者は指定薬物を服薬した上でfMRI検査に臨み、ストループ型干渉課題(注意機能を調べる標準的な心理課題)を遂行した。検査で得られたfMRI画像に対して標準的な画像処理を施した上で統計解析を行い、注意機能に関わる脳領域の同定を行った。その結果、プラセボ服用下では、帯状回〜運動野、大脳辺縁系(尾状核・被核)、視覚野、小脳などの領域において統計的に有意な脳活動の賦活が認められた。また、各部位における活動の時間的な変動が互いに相関することが分かった。一方、フルボキサミン服用時は、これらの領域の多くで賦活の低下が認められ、その傾向は特に辺縁系において顕著であることが分かった。今後、うつ病患者群を対象に同様の検査を行い、脳の賦活強度や範囲が、発病期から寛解期に至る過程でどのように変化していくか、またうつ尺度等との関連が見られるか等の検討を行う予定である。
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