Research Abstract |
線エネルギー付与(LET)の異なるX線と炭素線を用い,ヒト臍帯血造血幹/前駆細胞に対し,放射線照射後の巨核球・血小板造血におけるサイトカイン(トロンボポエチン[TPO],幹細胞因子[SCF],インターロイキン3[IL-3],flt-3リガンド[FL])の効果を評価すると共にDNAの二本鎖切断の指標であるγ-H2AX誘導を測定した,その結果,以下の点が明らかになった. 1.低LET放射線であるX線照射巨核球前駆細胞の放射線感受性は高いものの,サイトカインの組合せで放射線感受性が低下したのに対し,高LET放射線である炭素線では,サイトカインの組合せではほとんど感受性に変化がなく,わずかにTPO+SCF+IL-3とTPO+SCF+FLの組合せで効果が見られただけであった.一方,DNA損傷修復に関わるγ-H2AXの誘導性がX線照射群でのみサイトカインで亢進したことから,X線による損傷はサイトカインによって修復が効果的に行われた可能性が示唆された. 2.UT-7/TPO細胞を用いた実験においても,TPO+SCFの組合せでよりγ-H2AXの誘導が得られた.更にはその上流の分子としてATMタンパクのリン酸化も亢進していた.このことは,サイトカインシグナルがγ-H2AX及びDNA修復機構を誘導していることが示唆された.また,これらにはサイトカイン特異性があることも明らかとなった.しかしながら,サイトカインによる放射線感受性の低下が認められず,このDNA損傷修復機構への作用が直接的に細胞の生存には影響していないことが明らかとなった. 以上本研究結果から、サイトカインは放射線によるDNA損傷修復機構へ作用することが明らかとなったが,その効果は細胞によって異なる可能性が示唆された.
|