2006 Fiscal Year Annual Research Report
急性膵炎における膵微小血管病変の病態解明と血行改善を目的とした新しい治療法の開発
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18790953
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三上 幸夫 東北大学, 病院, 助手 (80422129)
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Keywords | 急性膵炎 / 膵壊死 / 走査型電子顕微鏡 / 微小循環 / 蛋白分解酵素阻害剤 / nafamostat mesilate |
Research Abstract |
(背景と目的)急性膵炎では発症早期に膵虚血を生じることがあるが、重症例ではその後、不可逆的な膵壊死に陥ることが多い。急性膵炎ではこのように膵血管病変が病態に関与している可能性があるが、膵血管病変を中心とした膵炎の重症化機序は明らかではない。平成18年度は各種ラット急性膵炎モデルを作成し、膵血管病変を走査型電子顕微鏡で観察した。また、蛋白分解酵素阻害剤を静脈内投与し、膵血管病変の変化を観察した。(方法)Wister系雄性ラットを以下の5群に無作為に分類した。(a)正常コントロール群、(b)軽症膵炎群;セルレイン膵炎モデル、(c)重症膵炎群;5%タウロコール酸膵炎モデル、(d)軽症膵炎+nafamostat mesilate(FUT)静注群、(e)重症膵炎+FUT静注群。以上のラットについて膵炎作成後6時間目に膵血管鋳型を作成し、走査型電子顕微鏡を用いて膵微小血管の変化を観察した。また別のラットを用いて膵組織および膵微小血管の組織学的検討を行った。(結果)1、軽症膵炎群では組織学的に膵間質の浮腫と腺房細胞の空胞化が著明であった。また、炎症性細胞浸潤も認めた。重症膵炎群では膵腺房細胞壊死が著明であり、出血も認めた。2、ラット急性膵炎モデルでは膵炎の重症度に応じた膵微小血管の変化(微小破綻、血管の狭小・途絶)を認め、小葉構造が障害されていた。この変化は軽症膵炎では毛細血管に留まっていたが、重症膵炎では中枢側の血管へと波及していた。3、軽症膵炎ではFUTの静脈内持続投与により膵組織学的変化・微小血管障害の改善傾向を認めたが、重症膵炎では明らかな改善を認めなかった。(結語)ラット急性膵炎モデルでは重症度に応じた膵微小血管の障害を認めた。この膵微小血管障害は軽症膵炎群ではFUT投与によって改善傾向を示した。
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