Research Abstract |
【背景】非小細胞肺癌手術症例の約半数はIB期以上であり,これらの症例に対する集学的治療の必要性が世界的に提唱されている。その中で化学療法効果予測因子としてバイオマーカーの有用性が注目され評価が多方面で進められている。細胞周期調節因子は抗癌剤作用の機序に密接に関連するため化学療法効果予測因子の候補となる可能性がある。【目的】非小細胞肺癌組織における細胞周期関連因子の発現を評価し化学療法効果予測因子となるかを検討する。【対象・方法】九州がんセンター呼吸器科で1992年から2005年の非小細胞肺癌完全切除症例のうち,術後再発に対して化学療法を行った症例で,周術期補助療法,評価病変への放射線照射,イレッサ使用例を除外した全59例を解析対象とした。これらの手術標本のパラフィン包埋切片にて癌組織のp53,p21,p16,p27,Skp2発現を免疫組織学的に評価し,再発後初回治療薬の種類,最大効果,再発後生存日数との関連を解析した。治療薬剤は,主な作用時期により細胞周期非依存性のプラチナ製剤,M期依存性薬剤のtaxan,VNR,S期依存性薬剤のGEM,FU,CPT-11の3種に群分けした。【結果】対象症例の背景は,男性40例,女性19例,平均年齢61歳であった。腺癌40例,扁平上皮癌15例,その他10例で,病理病期1-II,III-IV期はそれぞれ32例,27例であった。無再発期間中央値は12.7ケ月であった。初回治療薬はプラチナ併用使用が45例,M期依存性薬剤併用使用が43例,S期依存性薬剤併用使用が45例で,それぞれの奏効率は33.3%,37.2%,28.9%であった。免疫組織学的評価の結果はp53の減弱30例,増強29例,p21の減弱33例,増強26例,pl6の減弱33例,増強26例,p27の減弱27例,増強32例。Skp2の減弱29例,増強30例であった。各因子発現とそれぞれの薬剤の抗腫瘍効果に有意な相関を認めなかった。しかしp27の減弱した症例に関しては,プラチナを併用使用した20例が,使用しなかった7例に比較して有意に再発後生存日数が長く(p=0.0092),またSkp2の増強した症例に関しては,プラチナを併用使用した22例が,使用しなかった8例に比較して有意に再発後生存日数が長かった(p=0.0466)。また予後因子としての評価では,p21の増強した症例は減弱した症例に比較して有意に予後良好であった(p=0.0384)が,その他の因子では予後に差を認めなかった。【考察】p27はCDKIとして細胞周期をG1/Sで停止させ細胞は抗癌剤抵抗性を獲得し,Skp2はその抑制に働く。P27,Skp2はプラチナの化学療法効果予測因子となりうることが示唆された。
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