2008 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度電気刺激による成体神経新生の誘導と再生医療への応用
Project/Area Number |
18791031
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Research Institution | Tazuke Kofukai Medical Research Institute |
Principal Investigator |
戸田 弘紀 Tazuke Kofukai Medical Research Institute, 医学研究所・第5研究部, 研究員 (80414118)
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Keywords | 成体神経新生 / 脳深部刺激療法 / 視床前核 / 海馬 |
Research Abstract |
哺乳類成体脳の海馬歯状回と側脳室下帯に限り観察される成体神経新生は、様々な生理的・病理的因子の影響を受けることが知られている。またアルツハイマー病など海馬に病変を有する神経疾患においては神経新生の低下がこれら疾患の発症に関与すると考えられている。以上より成体神経新生は新たな治療法の標的として着目されている。本研究では成体神経新生調節機構における神経活動の重要性に着目し、脳深部電気刺激による恣意的な神経活動の変化が神経新生に与える影響を成体ラットモデルを用いて研究した。その結果、定位的に視床前核を短時間高頻度刺激すると、海馬神経新生が約二倍に増加することを確認した。さらにその増加効果を副腎皮質ホルモンによる成体神経新生抑制モデルで検討すると、視床前核高頻度刺激は抑制された海馬神経新生を正常近くに回復させる効果があることを示した。 成体神経新生の低下はアルツハイマー病、側頭葉てんかん、難治性うつ病など難治性神経疾患の重要な発症機構のひとつとして考えられている。本研究が示した神経新生低下の回復はこれら難治性神経疾患の新しい治療法として期待される。また本研究は成長因子・栄養因子だけでなく、神経活動自体が神経新生の調整に重要であることを示唆した。今後この研究を発展させ、神経新生におけるローカルサーキットの重要性を解明すれば、薬理的手法や脳深部刺激療法に代表されるニューロモデュレーションによる成体神経新生を標的とした新たな治療法の開発につながる可能性がある。
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