2006 Fiscal Year Annual Research Report
HMGB蛋白をターゲットとしたARDSの治療法および治療薬の開発
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18791095
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
上野 博司 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (20381965)
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Keywords | HMGB蛋白 / 急性肺損傷 / ARDS / 抗HMGTB1抗体 |
Research Abstract |
既にこれまでの研究で、急性肺損傷およびARDSの発症にHMGB1が関与し、肺傷害性に働くこと、LPS投与による急性肺損傷モデルマウスに抗HMGB1ポリクローナル抗体を同時に経気管投与すると、肺傷害が有意に軽減することを示した(いずれもAm J Resp Crit Care Med 171:1310-1316,2005)。一方、抗HMGB1ポリクローナル抗体投与によって、HMGB2をはじめとする相同性のある他のHMGB蛋白が同時に中和されている可能性が高い。さらに効率的に肺傷害軽減効果を得るためには、HMGB1により特異的に働くモノクローナル抗体の投与が必要と推測される。 そこで本年度は、はじめにHMGB1、HMGB2の様々なエピトープを認識するモノクローナル抗体を6種類作成して、LPS気管内投与による急性肺傷害モデルマウスに同時に経気管投与することにより肺傷害の程度、つまり抗体の有効性の評価を行った。現在のところ、抗体投与マウスの摘出肺の組織学的検討を行うにとどまっているが、概ね抗体の有効性が明らかになってきた。 HMGB Proteinは210個前後のアミノ酸で構成されており、HMGB1とHMGB2は約80%の相同性をもっが、両者の相同性が最も低い部位をエピトープとする抗体が肺傷害軽減に最も効果的であった。この抗体はHMGB1を最も特異的に認識する抗体である。一方、過去の文献的にはTNF放出能が最も高いとされる部位をエピトープとする抗体は、逆に肺傷害を悪化させる結果となった。また、HMGB1とHMGB2の両者に相同性が高い部位をエピトープとする抗体は、肺傷害を悪化させる事はなかったが軽減効果はあまり見られなかった。 来年度以降は抗体投与による実際の生存率の変化や、モノクローナル抗体のみの投与実験を行いHMGB蛋白の生理的役割を解明することなどが課題となる。
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