2007 Fiscal Year Annual Research Report
胎児発育における抗酸化系機構の意義-チオレドキシン過剰発現マウスを用いた検討
Project/Area Number |
18791150
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
梅川 孝 Mie University, 医学部附属病院, 助教 (80422864)
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Keywords | 妊娠 / 胎児発育 / 酸化ストレス / 抗酸化系機構 / チオレドキシン / 胎盤 / 糖輸送機構 / グルココルチコイド |
Research Abstract |
妊娠時の抗酸化系機構の意義を明らかにするため抗酸化物質の1つであるチオレドキシン(以下TRX)に着目し、ヒトTRX-1を全身に過剰発現するトランスジェニックマウス(以下TRX-Tg)を用いその妊娠母獣・胎仔に対する実験を行った。 胎児胎盤系における抗酸化系機構の役割について解析する目的で、雄性WtおよびTRX-Tgと雌性Wtを交配し胎仔、胎盤につき解析を行った。その結果、妊娠第15日における胎盤重量は両群間で有意差を認めなかったが、胎仔重量はTRX-Tg群で有意に重く、胎児胎盤重量比が有意に大きいという結果を得た。さらに、妊娠時酸化ストレスの主な原因であると考えられている胎盤を、酸化ストレスマーカーの1つであり活性酸素によるDNAの損傷時に生じる8-hydroxy-2'-deoxygu-anosine(8-0HdG)によって免疫染色を行ったところTRX-Tg群ではWt群と比較し8-0HdG発現が有意に減弱していることが明らかとなった。 さらに、TRX-Tg群における胎盤では、Wt群と比較して、胎児発育に関与するGLUT1のmRNAおよびタンパク発現が有意に増加していることを見いだし、胎盤におけるGLUT1の発現を介しヒトTRX-1が胎仔発育に影響を与えている可能性が示唆された。また、胎盤におけるGLUT1発現にはglucocorticoidの関与が指摘されているが(Hahn、1999)、TRX-Tg群における胎盤では、11beta-hydroxysteroid dehydrogenase type 1のmRNA発現が有意に増加し、11beta-hydroxysteroid dehydrogenase type 2のmRNA発現が有意に減少していることを見いだし、胎盤局所におけるglucocorticoid代謝の変化がGLUT1発現増加に関与していることが考えられた(論文投稿中)。 以上より、TRXによる抗酸化系機構は胎児発育と密接に関係していることが示唆された。その機序として、胎盤におけるGLUT1発現およびglucocorticoid代謝が関与している可能性が示唆された。
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