2006 Fiscal Year Annual Research Report
p21による活性酸素産生系と癌細胞死誘導能との関連の解析
Project/Area Number |
18791160
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 貴史 九州大学, 大学病院, 医員 (70380417)
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Keywords | p21 / 活性酸素種 / Apoptosis / 癌細胞老化死 |
Research Abstract |
【目的】CDKインヒビターであるp21の発現は細胞老化に重要な役割を果たす。さまざまな癌細胞株にウイルスベクターを用いてp21を過剰発現させると、癌細胞老化死を誘導することが報告されている。また、個体老化と活性酸素種(ROS)には密接な関係があることが以前より知られている。そこで我々は、p21による細胞老化死と活性酸素種とにどのような関係があるかを検討し、p21の関与する細胞老化機構を解明することを目的とした。 【方法】1)卵巣癌細胞株であるSKOV、子宮頸癌細株であるHELA細胞、大腸癌細胞株であるLOVO、且CT116細胞へ、野生型ヒトp21cDNAを、ウイルスベクターを用いて遺伝子導入した。2)細胞周期変化をFACS法、老化死誘導能をβ・gal染色、細胞内ROSレベルを蛍光色素であるDichlorof【uorescindiacetate(DCFH-DA)を用いてFACS法で解析した。3)ROS阻害剤であるN-acety1・L'cystein(NAC)を使用し、2)と同様に解析した。 【成績】1)全ての細胞株でp21を過剰発現させると、FACS法でG1期の増加を認めβ-gal染色陽性となり、細胞老化の誘導が示された。2)ウイルス量を調節し、p21発現量をさらに増大させると、核の断片化およびFACS法によってsubG1期への集積を認め、細胞老化に替わり、アポトーシスが誘導された。3)p21発現により細胞老化死が誘導されると、細胞内ROSレベルの増加が認められた。p21過剰発現によるアポトーシス誘導時では、細胞内ROSレベルは顕著に増加していた。4)NAC添加により、p21の発現に伴う細胞死を抑制できた。 【結論】1)p21は細胞内ROSレベルを増加させることにより、癌細胞死を誘導する。2)p21により誘導される細胞内ROSレベルにより、細胞老化死あるいはアポトーシスが選択される。
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