2006 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌発癌における腹腔マクロファージ由来サイトカインの影響
Project/Area Number |
18791162
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮原 陽 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (40404355)
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Keywords | 卵巣癌 / 腹腔マクロファージ / サイトカイン |
Research Abstract |
【目的】ヒト腹腔内にはマクロファージが常在し、卵巣癌の腹水中では増加し、さらに腫瘍組織の中にも集簇していることは既に知られている。そこで、卵巣癌におけるマクロファージの意義を解析することが新たな臨床的展開の可能性を有しているものと考えられる。今回、われわれはヒト卵巣表層上皮(OSE)を用いて、卵巣癌患者の腹水に存在するマクロファージおよびそれらに関わるサイトカインに関しての解析を行った。 【方法】インフォームドコンセントが得られた患者(卵巣癌2例、境界悪性群2例、良性群2例)から得られた腹水ならびに腹水からマクロファージを分離し培養した上清(2例)が不死化ヒトOSE細胞株(HOSE1)の増殖能に与える影響について検討した。また、卵巣癌18例の腹水(3卵巣癌9例、境界悪性群3例、良性群6例)の腹水をHuman Cytokine Protein Arrayを用いて、卵巣癌患者の腹水中のサイトカインの蛋白レベルでの発現程度について検討を行った。 【成績】卵巣癌患者の腹水は、非卵巣癌症例の腹水と比較して有意にHOSE1の増殖能を亢進した。(P<0.01)。卵巣癌腹水中から分離培養したマクロファージの培養上清も同様にHOSE1の増殖能を亢進した(P<0.01)。また、これらの卵巣癌症例の腹水中にはサイトカインであるIL-6、IL-8、IL-10、growth related oncogene (GRO) の蛋白レベルでの発現亢進が観察された。 【結論】卵巣癌症例の腹水及び腹腔マクロファージ培養上清は、卵巣癌の発生母細胞であるOSEを増殖させる作用を有していることが確認された。また、腹水中にはマクロファージ由来と考えられるIL-6、IL-8、IL-10、ならびにGROの存在が確認され、これらのサイトカインを介し、腹水のマクロファージが卵巣癌の発生あるいは進展機構に関与している可能性が示唆された。
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