2008 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌発癌における腹腔マクロファージ由来サイトカインの影響
Project/Area Number |
18791162
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮原 陽 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (40404355)
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Keywords | 卵巣癌 / 腹腔マクロファージ / サイトカイン |
Research Abstract |
【目的】女性の腹腔内には6.0-7.0×10^6のマクロファージ(Mφ)が存在するが、上皮性卵巣がんの腹水中でMφが増加し、腫瘍組織間にも浸潤、集簇することは既に知られている。Mφは腫瘍周囲の微小環境により、免疫抑制に働くM2Mφに分化し、浸潤・血管新生を促進することで腫瘍増殖に関わることが報告されているが、ヒトでの研究は殆どなされておらず、卵巣癌におけるMφの意義を解析する事が新たな臨床的展開の可能性を有しているものと考えられる。 【方法】(1)卵巣癌症例およびコントロール群症例の腹水を採取し、腹水中のMφの数、ならびにそのMφの中に占めるM2Mφの割合について、(2)卵巣癌腹水がhOSEとヒト卵巣癌細胞株SKOV3の増殖を促進するかどうか、(3)卵巣癌患者の腹水中で増えているサイトカインをELISAにて測定、(4)増加しているサイトカインをM2Mφが産生しているか、(5)腹水中で増加しているサイトカインが細胞増殖に関わるかどうか、(6)卵巣癌腹水がヒト単球系細胞株THP-1の分化に与える影響について、それぞれ検討した。 【成績】良性、卵巣癌症例から得られた腹水より、卵巣癌III、IV期(4例)では良性疾患(3例)や卵巣癌I期(1例)に比べて腹腔MφおよびM2Mφが増加していた。hOSEとSKOV3に腹水上清(良性4例、卵巣癌I期3例、卵巣癌III、IV期12例)を加えて増殖能を検討したところ、卵巣癌III, IV期症例の腹水で刺激した方が有意に細胞増殖を促進させた。腹水上清(良性4例、卵巣癌I期3例、卵巣癌III、IV期12例)中で増えているサイトカインについて検討したところ、IL6、IL10、GROαが卵巣癌III、IV期で高い発見がみられたが、IL8、IL12、IL15、LIF、MCP-1, M-CSF、TNFαでは差はみられなかった。増加しているIL6やIL10は、腹水中のMφの免疫組織化学にて、二重陽性像が確認され, Mφがこれらのサイトカインを産生することが示唆された。また、卵巣癌腹水中で増加しているIL6、IL10、GROでSKOV3を刺激すると、細胞増殖を促進された。M2Mφの指標としてIL10を用い、卵巣癌腹水がTHP-1の分化に与える影響をみたところ、進行期卵巣癌の腹水で刺激したTHP-1はM2Mφへの分化がみられた。 【成績】進行期卵巣癌患者の腹水中ではMφは増加しており、腫瘍増殖に関与するM2Mφの数も同様に増えていた。卵巣癌進行期患者の腹水中には、細胞増殖を促進する因子が含まれており、実際に増加しているサイトカインはMφも産生しており、直接細胞増殖に関与することが分かった。また、卵巣癌腹水にはMφをM2Mφへ分化させる因子が含まれていることが示唆された。 【結論】進行期卵巣癌腹水中には、MφをM2Mφへ分化させる因子が含まれており、腫瘍増殖、播種進展に好環境の場を提供していることが示唆された。よって、MφのM2Mφへの分化が卵巣癌の播種進展に寄与している可能性が考えられ、M2Mφへの分化に関わる因子の同定が卵巣癌の治療戦略の一つと考えられた。
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