Research Abstract |
【目的】 子宮筋は妊娠・分娩時に著明な増大と細胞数の増加を示し,産褥期には急激にアポトーシスを起こすことが知られている非常にユニークな組織である.それ故に主な構成組織である子宮平滑筋において,組織幹細胞の存在が示唆される.本研究では,ヒト子宮平滑筋におけるSPの同定・単離と機能解析を通じて,子宮筋における幹細胞システムの存在を明らかにすることを目的とした. 【方法】 手術摘出子宮検体より分散細胞を得てHoechst染色した後,子宮筋SP(MSP)をFACSにて分離した.MSPおよびMSP以外の子宮筋細胞(non-MSP)の細胞周期をPyronin Y+Hoechst法で,発現遺伝子・蛋白をRT-PCRおよび免疫染色法で解析した.MSPの多分化能については,アルカリフォスファターゼ活性・Oil red O染色を指標にして,骨・脂肪細胞への分化誘導をin vitroで行うとともに,重度免疫不全マウスへの移植実験により,MSPが子宮筋様組織をin vivoで再構築するかについて調べた. 【成績】 MSPは,幹細胞マーカーであるABCG2を発現しており,細胞周期上GO期のquiescentな状態を呈していた.MSPはin vitroで骨・脂肪細胞へ分化するとともに,in vivoでは平滑筋マーカーを発現する平滑筋様の組織を構築した.以上の結果は,non-MSPには認められずMSPに特有であった. 【結論】 MSPが,1)未分化状態,2)多分化能,3)自己組織構築能,といった組織幹細胞特性を有することから,子宮筋において,MSPを中心とする幹細胞システムが存在する可能性が示された.単離したMSPは,子宮筋の発生機構,妊娠・分娩における子宮筋の増殖・退縮・機能発現を担う細胞メカニズム,更に子宮筋腫などの子宮筋由来疾患の病因を解析するうえで有用な生物資源となる.
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