2006 Fiscal Year Annual Research Report
マウス前庭神経節の機能分化におけるBDNFの役割についての基礎的研究
Project/Area Number |
18791190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千原 康裕 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20401060)
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Keywords | 耳鼻科 / 前庭 / 神経科学 / 電気生理 |
Research Abstract |
前庭神経節に関して、これまでin vivoでの研究はあったが、in vitroでの報告はほとんどなかった。本研究では、まずマウスやラットからの前庭神経節細胞の単離・培養を確立させた。その上でコントロール実験としてワイルドマウスやラットからの培養前庭神経節細胞に対しホールセルパッチクランプ法で膜特性を解析した。電流固定モードで、同じ電流注入に対して主に単発性の発火しか起こさない細胞(Phasicタイプ)と、連続発火を起こす細胞(Tonicタイプ)、およびその中間型の細胞(Intermediateタイプ)を認めた。これらの発火特性の違いを調べるために、電圧固定モードを用いて調べると、両者の間ではカリウム電流の特性が異なることが判明した。デンドロトキシン(DTX)などの阻害剤を使用することにより、発火特性の違いは主に低閾値にて活性化するDTX感受性の電位依存性カリウムチャネルに起因することが判明した。以上の成果は、2007年5月に第108回日本耳鼻咽喉科学会総会(金沢)にて報告した。続いて、BDNFノックアウトマウス(ヘテロ)の培養前庭神経節細胞での発火特性を調べ、ワイルドタイプと比較を行った。すると両者の間では、発火特性が変化することが判明してきている(この成果は欧文医学雑誌への投稿準備中)。従来、BDNFなどの神経栄養因子は細胞の生存、維持、発達に必要とされていたが、神経細胞の発火特性の違いに関与しているというデータはなかった。BDNFが発火特性に関わるイオンチャネルの発現をコントロールしている可能性があると考えている。発火特性の違いが、どのようなイオンチャネルの違いに由来するのかを、ジーンチップ、特定のチャネルに対する阻害剤、などを用いて調べている。
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