2006 Fiscal Year Annual Research Report
前庭障害者における体循環および自律神経への影響についての検討
Project/Area Number |
18791203
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中村 陽祐 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (70403417)
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Keywords | HDT / 前庭 / 前庭破壊 / 交感神経 / 血圧 / 循環 |
Research Abstract |
宇宙の微小重力環境下では、宇宙酔い、顔面浮腫、筋萎縮などの症状がおこる。これらの症状は耳石入力の低下、体液の頭方移動、筋への機械的刺激の低下などが原因と考えられている。しかしその発症のメカニズムは未だ不明である。一方、前庭障害のある患者が体位を変換したときにめまい発作を生じ、悪心、嘔吐、冷汗など種々の自律神経症状を呈することは臨床医にとってしばしば遭遇する症状である。この2つの例の病態を考えると、前庭入力の変化と体液の移動が循環動態の変動を惹起し、症状の起因となることは容易に想像できる。前庭入力の心血管系に対する影響が報告されており、HDTを行うと頭位が変化するので、前庭が循環調節に影響を及ぼすと考えられる。しかし、HDT中の前庭入力の変化と心血管応答に関連した報告は見当らない。そこで本研究の目的は、前庭入力の変化と体液移動という現象が自律神経系に及ぼす影響を再検討し、さらに脳循環動態に及ぼす影響を明らかにしたい。現在我々は、前庭を破壊した動物を用い、麻酔下で模擬微小重力負荷(Head-Down Tilt, HDT)試験(前庭破壊+HDT)を行い、循環動態を解析している。体位変換前後の動脈圧と腎交感神経活動を記録し、従来の前庭障害のないHDTモデル(対照群)と比較した。対照群では、体位変換中に腎交感神経活動が著明に低下し、体位変換直後に動脈圧が低下した。前庭破壊群では、体位変換中に腎交感神経活動のはっきりした変化を認めなかった。血圧に関しても、対照群でみられたような動脈圧の低下を認めなかった。今後は動物実験とともに、前庭障害のあるヒトにおいてHDT試験を行いたい。そして動物の(前庭破壊+HDT)モデルから得られた前庭が循環動態に及ぼす影響と比較し、ヒトにおける前庭入力の変化と体液の頭方移動の連関を解明したい。
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