2006 Fiscal Year Annual Research Report
ベル麻痺モデルを用いた顔面神経麻痺治療の検討とウイルスゲノム戦略に関する研究
Project/Area Number |
18791214
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高橋 宏尚 愛媛大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90403807)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス1型 / ベル麻痺モデル / gE欠損株HSV-1 |
Research Abstract |
末梢性顔面神経麻痒は脳神経麻痒の中で最も高頻度な疾患であり、非対称な顔貌が後遺症として残るため患者に与える苦痛は大きく、現代社会において課題の多い疾患である。末梢性顔面神経麻痒の中で最も多いベル麻痺の病因はこれまで不明であったが、その発症に単純ヘルペスウイルス1型(以下HSV-1)の再活性化が関与していることが明らかになってきた。しかし、麻痺の病因としてHSV-1の関与は明らかとなったが、早期診断の困難さなどから後遺症を残さない有効な治療は確立していないのが現状である。申請者らは既に動物実験において、HSV-1初感染、再活性化による顔面神経麻痺モデルの作製に世界で初めて成功している。このモデル動物は一側性、一過性に麻痺を来たし、ベル麻痺の臨床像に類似したモデル動物として世界的に注目を集めている。本モデルを用いた新しい治療法の試みや、現在行われている治療法の効果の検討は、臨床的にも非常に有意義であると考えられる。本研究の目的はベル麻痺に対する現在行われている治療法の有効性の比較と、新しい治療としてウイルスベクターを用いた神経成長因子の神経細胞内投与の可能性を検討することにある。今年度は基礎実験として、感染性を減弱したヘルペスウイルス(具体的にはエンベロープ上の糖蛋白gEを欠損させる)をベクターとして用い神経成長因子を顔面神経膝神経節へ輸送し、神経障害後の再生促進を検討するために研究を行った。具体的には脊髄後根神経節から摘出した神経細胞を培養し、これにHSV(gE欠損株)を感染させ、ウイルス感染動態を経時的に観察した。その結果、gE欠損株HSV-1は長時間ニューロンの細胞質に停滞することが明らかとなり、さらなる検討は必要であるがウイルスベクターの候補と考えられる。今後、このウイルスに神経成長因子などの神経再生促進効果を持つ薬剤を組み込み、Bell麻痺モデルに投与することで治療効果の研究に応用できる可能性を示唆している。
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Research Products
(4 results)