2006 Fiscal Year Annual Research Report
超高速ビデオ解析による内耳外有毛細胞におけるマイクロ秒単位の運動能制御機構の解明
Project/Area Number |
18791217
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 希 九州大学, 大学病院, 医員 (60419596)
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Keywords | 耳鼻咽喉学 |
Research Abstract |
研究代表者は顕微鏡画像と電気生理学データを取り込み解析する装置を稼動させた。高速度顕微鏡カメラについて数機をデモしたが取り込み画像の暗さとノイズの多さにより解析困難と判明し現在機器選定を続けながら通常の顕微鏡カメラにて基礎実験を続けている。 細胞骨格を制御するRhoキナーゼにより外有毛細胞の運動能が制御されるという基礎データがあったためこれを発展させ、Rhoキナーゼの下流シグナルの検索を行った。別の種類の細胞で運動能を制御するとされるLIMキナーゼはRhoキナーゼの下流のシグナルのひとつである。したがってLIMキナーゼとさらに下流のcofilinというタンパクを修飾し外有毛細胞運動能を検討した。すると以下の2点の興味深い結果が得られた。 1.Rhoキナーゼを活性化させるLPAを投与して最も下流のcofilinがリン酸化されるか検討したところ非常に強くリン酸化されることが判明した。LPAによるcofilinのリン酸化は途中のRhoキナーゼを阻害すると「一部分だけ」リン酸化を食い止めた。すなわちRhoキナーゼはその下流のLIMキナーゼとcofilinを確かに制御しているようであるが、Rhoキナーゼに依らない機構もありそうである。 2.次に外有毛細胞運動能について検討した。Rhoキナーゼを阻害すると外有毛細胞運動能は減弱する。LIMキナーゼを阻害すると同様に外有毛細胞はその運動能を減弱させ、一部の細胞では全く運動能が見られなくなった。これはLIMキナーゼを阻害させるペプチドと同一のアミノ酸を別の配列にした対照用ペプチドの投与では見られない効果であったためLIMキナーゼが外有毛細胞運動能を制御する非常に重要なシグナルの一つであると示唆された。 研究代表者は以上の結果を外有毛細胞運動能の制御機構解明という当初の研究目的を達成する重要な知見と考え引き続き周辺シグナルの修飾についての研究を加えている。
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