2006 Fiscal Year Annual Research Report
鼓膜留置型の振動子を用いた先進的電磁補聴システムの開発
Project/Area Number |
18791238
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
一針 幸子 順天堂大学, 医学部, 助手 (30327803)
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Keywords | 老人性難聴(2)(3)(5)(6) / FEM中耳モデル / コイル付鼓膜留置 / 蝸牛電位 |
Research Abstract |
人口の高齢化に伴い、老人性難聴は増加の一途をたどっており,早急な対策が望まれる問題となっている。老人性難聴の増加による難聴人口の増加は、単に聞こえだけの間題ではなく、コミュニケーションの減少による痴呆症の増加を引き起こし、高齢化社会において経済的に大きな損失をもたらすと推測される。近年,デジタル技術の発達により,高音域の補聴特性を細かく制御することで、音声明瞭度の向上を目指した補聴器が開発されつつある。しかし,これらイアホンを用いた補聴器には,克服することができない代表的な3つの欠点が存在する。1つは外耳道の閉鎖による、強い耳閉感の出現。2つめは音響の増幅による、ハウリングの出現。3つめは高度難聴患者における高出力時の強い不快感による、出力の限界。この欠点により、補聴器の使用を諦めた患者様をみる機会がとても多いのが現状である。この間題を解決するため、外耳道の音響特性の影響を受けず、駆動力が強く高音質であるなどの利点を有した、人工中耳(圧電素型、電磁誘導型)による補聴システムが開発されつつある。しかし、これらは装着時に侵襲の強い中耳手術が必要であり、広く実用化される段階には至っていない。そこで、装着が容易で,高い補聴効果が得られる、最適な電磁誘導型補聴システムを,コンピューターシミュレーションとモルモットにおけるシミュレーションにより開発する。 独自に開発を進めてきたFEM中耳モデルを発展させ、鼓膜に振動子を挿入したモデルを研究室に現有するパーソナルコンピュータ及び、購入予定のプログラミングソフトを用いて構築した。上述に構築したモデルを用い、コンピュータで外耳道の振動磁場中での中耳挙動を解析した。コイル付鼓膜留置チューブ型振動子、マグネットを試作し、モルモットに組み込み,振動磁場を与えた場合の蝸牛電位を、購入予定の解析機器にて測定した。FEM解析結果と測定結果を比較し、振動子の形状、挿入部位等、未知な境界条件を決定し、解析の信頼性を高めることが可能であった。振動子の寸法、質量および取り付け位置を様々に変えて解析を行い、内耳で得られる蝸牛電位を記録し、最適な振動子とマグネットの仕様および配置を決定した。引き続き同システムの臨床応用を目指し、実験結果を検討し実際の患者への挿入を想定した、臨床実験の構想を作成し倫理上の間題点等、専門家との協議を行った。
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