2006 Fiscal Year Annual Research Report
特発性混合性喉頭麻痺の成因としての水痘帯状ウィルス感染に関する免疫組織学的研究
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18791248
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
千年 俊一 久留米大学, 医学部, 助手 (20299514)
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Keywords | ウィルス / 感染症 / 脳、神経 / 免疫学 |
Research Abstract |
突然の嘆声や嚥下障害を訴え受診した患者のうち、喉頭ファイバー検査で一側あるいは両側の声帯麻痺を認める(他の脳神経症状があるものを含む)症例を対象にした。ただし、挿管性などの外傷性声帯麻痺、頭頸部画像検査における脳血管障害、腫瘍性疾患および肺・心疾患などの明らかな原因がある症例は除いた。これらの原因となる基礎疾患のない対象症例を特発性(混合性)喉頭麻痺と診断した。これまでに経験した対象症例である7例の特発性混合性喉頭麻痺症例に対し以下の方法で検討を行った結果、ある程度の知見を得ることができた。 1、血清学的に水痘・帯状庖疹ウイルス抗体価(VZV CF, VZV EIA IgG, VZV EIA IgM)を症状の急性期(発症直後)、維持期(1〜2週間後)、回復期(4週間後)に分けて測定した。その結果、すべての症例で有意な抗体価の変動を示した。また、除外診断として、血清学的に各ウイルス抗体価(インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス)も測定したが、有意な抗体価の上昇を認めなかった。 2、1症例にPCR法を用いて髄液中の水痘帯状庖疹ウイルスDNA検出を行ったが、結果は陰性であった。 3、全例に喉頭筋電図を用い障害された神経の同定を行ったところ、患側反回神経だけでなく患側上喉頭神経外枝の障害を示唆する所見が得られた。(迷走神経節より中枢で障害が起こっているものと示唆される。) 以上のことから、特発性混合性喉頭麻痺の原因に関与しているウイルスは水痘・帯状庖疹ウイルスの可能性が最も高い。また、特発性混合性喉頭麻痺は迷走神経節より中枢側で水痘・帯状庖疹ウイルスが再活性化し障害を与えていることが示唆された。
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