2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18791384
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
神原 賢治 鹿児島大学, 大学院医歯学総合研究科, 助手 (60305141)
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Keywords | P.g / クラミジア / 動脈硬化 / TNF-α / TACE |
Research Abstract |
歯科医療における感染性微生物は多岐にわたる。それらは、口腔粘膜に発症するウイルス性疾患や歯性感染などの口腔内常在菌による内因性感染などである。近年、口腔内感染症としては問題視されていなかった感染微生物が注目を浴びてきているが、これらは全身疾患との関連性が見いだされたにほかならない。その中でクラミジアは、咽頭感染してはいるが、口腔疾患とのかかわりが薄く、口腔内感染症としての認知度が極めて低かったが、Porphyromonas gingivalis(P.g)とともに、心筋梗塞との関連が示されて以来、注目されている。しかしながら、その発症機序が明らかになっていない。また、これら微生物の単独感染が原因となる心筋梗塞なのか、多種の微生物による混合感染によるものなのかすら定かでない。これらを考慮すれば、関連微生物の病原因子個々のビルレンスを詳細に調べ、制御する手段を試みる必要がある。本年は、P.gのビルレンスが感染個体に与える影響について重点的に検討した。P.gのビルレンスのなかでとりわけ重要な因子としてLPSがあげられるため、LPSが感染個体の免疫系に与える影響を考察した。われわれはフェノールウォーター系で抽出したLPSを人由来モノサイトHL-60を用い、TNF-αの産生を詳細に検討した。比較対象として、大腸菌およびActinobacilus actinomycetemcomitans(A.a)を用いて評価した。しかしながら、P.gのLPSはTNF-αの産生能が極めて低く、十分な強いビルレンスを持ち合わせていないと考える。我々は、更に、マウスおよびラットに対し、LPSでなく全菌体を尾静脈中に接種することで、TNF-αの産生を評価した。大腸菌やA.aと比べTNF-αの産生は低いものの、十分なTNF-αの産生を確認出来た。これらは病原因子として、LPSとは異なる成分が関与していることを示すものである。我々は更に、TNF-αの産生を抑制する低分子化合物を保持していることから、in vivoにおけるTNF-αの産生の抑制を試みた。その結果、3mg/kgの経口投与で十分なTNF-αの産生抑制効果が確認出来た。 これらから、P.gの病原性として免疫反応を強く生じさせるTNF-αの産生はLPS以外の菌体成分であることが明らかである。また、これらTNF-αの産生を、低分子化合物により抑制することができ、これら菌体が原因となる各種疾患の予防並びに治療の一助になると考えられた。
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