Research Abstract |
齲窩形成の抑制のためには,歯質に生じた脱灰・再石灰化状態を判定することがその予防対策の立案にあたり重要な事項となる。本研究では,非破壊的に物質の状態を測定可能である超音波パルス法に着目し,脱灰あるいは再石灰モデルを実験室で構築し,ロ腔内で応用するための基礎的事項について検討を行った。前年度の実験結果から,歯質の脱灰状態を非破壊的に超音波パルス法で把握することが可能であることが判明した。そこで,本研究の2年目では脱灰抑制・再石灰作用が臨床的に注目されているカゼインホスホペプチドー非結晶性リン酸カルシウム(CPP-ACP)を用いて歯質の再石灰化モデルを実験室で構築し,石灰化状態の把握を超音波パルス法によって試みた。すなわち,0.1M乳酸緩衝液(pH 4.75)を調整,これにウシ下顎前歯エナメル質および象牙質試片を10分間浸漬した後,人工唾液(pH 7.0)に浸漬保管した。また,試片の脱灰溶液への浸漬に先立ってCPP-ACPペースト(Tooth Mousse, GC)およびプラセボペースト(CPP-ACP未含有)の10倍希釈液に10分間浸漬するというサイクルを一日二回繰り返し行い,一ケ月間この操作を連続して行った。また,1,7,14,21および28日毎に超音波パルス法を用いて試片の縦波音速を測定するとともにその試片の形態学的検索を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した。 その結果,エナメル質においてはCPP-ACP応用群で浸漬期間7日後からコントロール群と比較してその縦波音速が有意に増加した。また,その縦波音速は実験期間の延長に伴って増加した。一方,CPP-ACP無添加のプラセボペースト応用群では,その縦波音速は浸漬期間7日後からコントロール群と比較して有意に低下し,期間の延長に伴いその音速も低下した。また,象牙質試片では,プラセボペーストは,浸漬期間の延長に伴って縦波音速が減少する傾向を示したものの,CPP-ACPペースト応用群では,音速の変化は測定期間を通じて認められなかった。また,SEM観察による形態学的な検索においてもCCP-ACP応用群では,実験期間を通じて脱灰歯質特有な形態学的な変化は散見されなかった。
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