Research Abstract |
営科診療において頻繁にみられる歯牙周囲の骨欠損部に、高分子多糖含有の含そう剤を応用することを目的とし、in vitroにて検索を行った.すなわち生体に近い三次元の状態をin vitroで再現できるコラーゲンゲル培養をおこない,高分子多糖存在下の遺伝子発現レベルを検索した.さらに,ゲルの培養条件を変化させることで,細胞内張力を変え,そのときの遺伝子発現をも同様に検索した. 高分子多糖はピアルロン酸(HA)を用いた。全実験で用いた細胞は骨芽細胞様細胞(MC3T3・E1)、HAは分子量6-12x10^5のアルツディスポ(生化学工業)である。 細胞を包埋したコラーゲンゲルを作製するために、0.3%ブタ腱由来酸可溶性I型コラーゲン溶液,5倍濃縮培地,再構成緩衝液(0.05 N NaOH,2.20% NaHCO_3,200 mM HEPES)を混合した溶液に,細胞を2×10^5個/mlとなるよう混和し、ゲル化した。培地として1mg/mlのHA(分子量60万〜120万,生化学工業)添加培地(HA群)を3mlずつ重層し,その後ゲルをプレートから剥離,浮遊させ,37℃,5% CO_2下にて培養した.なお,一部はゲルを浮遊させずにプレートに固定させたままとした.HA無添加培地をコントロール群とした.培養7日後オリゴマイクロアレイを、培養3目後にリアルタイムPCRを行った。 オリゴマイクロアレイの結果から,HA群とコントロール群のシグナル強度がともにバックグラウンドより明らかに強く,信頼性の高い遺伝子が9,288得られた.そのうち,2.0倍以上シグナル変動の比が上昇している遺伝子が102,下降している遺伝子が201得られた.また,リアルタイムPCRより,レセプターの遺伝子発現は,浮遊ゲルではHA添加で上昇傾向がみられたものの有意な差は認められなかったが,固定ゲルではHA添加で有意に上昇が認められた(pく0.05). 以上の結果より,骨芽細胞は細胞内張力の生成でも遺伝子発現は変化するが,HA存在下ではさらに顕著に変化したことから,HAがレセプターを介する伝達系に影響を与えていることが示唆された.
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