Research Abstract |
口腔扁平上皮癌の予後を左右する因子として,癌細胞の浸潤能がある。腫瘍の転移には細胞間接着の減弱,マトリックスメタロプロテアーゼなどの活性化,細胞の運動の亢進などが重要であると考えられており,なかでも細胞骨格であるアクチン束状化のダイナミックな変化が重要な因子の一つであると認識されている。そこで,本研究では口腔扁平上皮癌におけるアクチン束状化タンパク質actinin-4の発現と臨床病理学的因子との関連を明らかにすることを目的とした。当科で治療を行った口腔扁平上皮癌64例の生検時標本および正常口腔粘膜症例10例を用い,抗ヒトactinin4抗体で免疫組織化学染色を行った。さらに,腫瘍細胞株SAS, OSC20, HSC-2, HSC-3, HSC-4, SCC25, Ca9-22, MCF7を用いてactinin4に関して,半定量RT-PCRでmRNA発現の解析を行い,細胞生物学的特性との関連を検討した。actinin4の発現は正常口腔粘膜および口腔扁平上皮癌にみられたが,口腔扁平上皮癌において優位に過剰発現していた。また,性別,年齢,腫瘍サイズ,頸部所属リンパ節転移および分化度との間に相関性はみられなかったが,浸潤パターンとの間に相関性(P<0.05)がみられ,癌細胞浸潤能との相関が示唆された。また,培養細胞においてもactinin4mRNA発現は癌細胞浸潤能を反映していた。actinin4は口腔扁平上皮癌において癌細胞浸潤に関与していることが示唆された。現在,actinin4の発現をRNAiで抑制し浸潤能,増殖能への影響を検討中である。 また,頬粘膜に発生した巨細胞線維腫,頬粘膜に発生した導管内乳頭腫,舌下腺に発生した乳頭状嚢腺腫について免疫組織科学的,あるいは文献的に検討し論文として発表した。
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