2006 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生抑制因子PEDFの細胞外マトリックス受容体の同定
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18791547
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
細道 純 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助手 (00420258)
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Keywords | 炎症 / 血管調節因子 / PEDF / iNOS / エストロゲン |
Research Abstract |
血管新生は血管新生促進因子と抑制因子のバランスにより厳密に制御されたプロセスである。このプロセスには血管内皮細胞増殖因子VEGFや網膜色素上皮由来因子PEDF、誘導型一酸化窒素合成酵素iNosなどの血管調節因子が重要な役割を果たしており、炎症をはじめとするさまざま病態に関与している。本研究では、内因性血管調節因子の炎症への関与の検討を目的として計画された。 近年、顎ロ腔領域の炎症疾患として顎関節症が注目されている。顎関節症の原因としてさまざまな要因があり、複数の要因が同時に重なったとき発症する。女性における顎関節症の発症頻度は高く、その臨床症状も男性に対し重度になりやすい。とりわけ出産適齢期の女性に頻発する。病理学的研究から顎関節滑膜組織にエストロゲン受容体が存在することが明らかにされており、女性ホルモンが顎関節へ影響を及ぼす可能性が推測される。それゆえ顎関節症の病態におけるエストロゲンとiNosの関連が疑われる。また臨床研究から、顎関節症の誘因のひとつとして下顎偏位に伴う顎関節への力学的負荷が唱えられている。過去の報告から、実験的にラット下顎を機能的側方偏位させた結果、下顎頭の形態および組織学的変化を生じることが明らかにされている。 そこで本研究では、ラット下顎側方偏位モデルを作製し、炎症因子のひとつである誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を指標にくエストロゲンの顎関節滑膜への影響を検証することを検討した。iNOSは関節炎の発症機序において重要な役割を担う内因性因子である。実験モデルの作製にあたって、発情期の7週齢雌性ラットの上顎切歯に斜面誘導板を装着し下顎の側方偏位を誘導した。そして、発情期(エストロゲンレベルが低い)と発情前期(エストロゲンレベルが高い)に、また2回のエストロゲンサイクルにわたって、iNOSを指標にして顎関節滑膜組織を免疫組織学的に観察した。その結果、エストロゲン存在下では、下顎偏位による滑膜のiNOS発現が増加し、顎関節の病態に血管調節因子iNOSとエストロゲンの関与が示唆された。
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