Research Abstract |
平成20年度は脳性麻痺者(以下、CP者とする)を対象(下顎臼歯部)に可撤性補綴装置非装着時および可撤性補綴装置装着時において咬合や下顎位感覚に及ぼす影響の有無を確認するため, この2つの条件における下顎位感覚の相違を咀嚼筋に対する弁別能を下顎位感覚弁別能テストにより比較検討し記録・分析を行った。被験者および測定方法, 手順は, CP者15名とし, 被験者の選択基準は, (1) 本研究の趣旨を理解し同意が得られていること(2) 上顎前歯部に歯冠補綴物がないこと(3) 顎口腔機能に異常がなく個性正常咬合であることとした。測定方法,手順としては, 下顎位感覚弁別能測定を以下の手順で行った。 被験者を診療用ユニット上に座らせ, Morimotoの方法に準じた下顎の位置感覚の弁別能を測定する。それは, 誤った回答数を全回答数で除し百分率にし, 不正解率(rate of mis-estimate, 以下R. M. E. とする)を求め弁別能力を評価する。即ち, R. M. E. が高いほど, 下顎位感覚の弁別能力は低く, R. M. E.が低いほど弁別能力は, 高いことを示す。条件については各被験者に対し, 上記の測定に関して, 可撤性補綴装置非装着時および可撤性補綴装置装着時の2つの条件化で行う。他の条件としては, 特になく通常の状態において実施した。 その結果, 以下の知見を得た。CP群の下顎義歯における非装着時および装着時の不正解率の比較では, 試験棒が基準棒より細い9.5mmの場合では, 装着時は非装着時よりも不正解率が有意に低い値を示した(p<0.05)。その他の試験棒では有意差は認められなかった。以上のことから, 本研究において, 義歯の装着によりCP者固有の持続的な筋トーヌスの亢進や下顎に付着する筋の筋紡錘を支配するγ-運動神経の過度な興奮による過緊張が抑制されたため, CP者の下顎位感覚の弁別能力が向上したものと推察できる。
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