Research Abstract |
本研究は,慢性統合失調症患者の意思決定を重視し,より質の高い医療・看護を提供するため,慢性統合失調症患者が認知しているセルフケア能力を明らかにすることで,患者参加型の医療の標準化をめざす指標を検討することを目的としている。本年度は,昨年度作成した,「慢性統合失調症患者のセルフケア能力アセスメントツール(案)」に基づいてインタビューガイドを作成し,セルフケア理論を導入している臨床に勤務するエキスパートナース16名(名古屋・高知・長崎)に対し,慢性統合失調症患者のセルフケア能力をどのようにみているのか,またセルフケア能力を認識しているのかインタビューを行った。その結果,オレム理論の10パワー構成要素に含まれる【4:論理的な思考能力(セルフケアがなぜ必要なのか)】【8:認知,知覚,操作,対人関係能力】は,認知に症がいがあり生活の困難さがみられる統合失調症の患者に対し,論理的な思考や,認知,知覚,対人関係能力がどこまで能力としてあると捉えてよいのか,また【1:健康に対し,注意と関心を持ち続ける能力】に対して 常に健康について考えることは難しいのではないのかなどの意見が見られた。しかし,客観的に看護師が捉える視点と,慢性統合失調症者が捉える視点には違いがある可能性もあり,患者と看護師の共通理解のためのツールとして使用することで,そこから展開し得られる情報の共有が,患者参加型の医療を目指していくうえでも,必要となるのではないかと考えられた。次年度ではさらに項目数を減らし,簡便性,受容性を考慮した項目の内容を再検討し,フォーカスグループでの検討,実際に患者にツールを使用して評価してもらい,より臨床にあわせたアセスメントツール作成を目指す。
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