2007 Fiscal Year Annual Research Report
染色体転座キメラ因子関連蛋白を標的とした抗がん剤の迅速適用と開発
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18799001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 真寿美 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 助教 (30431307)
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Keywords | 染色体転座 / 悪性腫瘍 / 抗がん剤 / 治療 / 診断技術 |
Research Abstract |
染色体転座に由来する悪性腫瘍の多くは複雑な細胞動態を示し、一般的な化学療法に耐性で予後も悪いことから、より効果的な抗がん剤の適用やその診断が急務の課題となっている。我々は、平成18年度の研究より、キメラ遺伝子産物SYT-SSXを発現するヒト滑膜肉腫において、ある種のチロシンキナーゼ阻害剤がその増殖能や細胞運動能を著明に低下させることを明らかにした(特許出願:2007-3808)。この成果に基づき、当該年度においては、in vivoマウスにおけるチロシンキナーゼ阻害剤の抗腫瘍効果を検討した。ヌードマウスの皮下にヒト滑膜肉腫細胞株を接種して腫瘍塊を形成後、チロシンキナーゼ阻害剤を腹腔内投与し、腫瘍内のシグナル伝達抑制効果を経時的に解析した。この薬剤投与により、シグナル伝達経路のスウィチング分子として機能するGabl、さらには滑膜肉腫の増殖能に関与するp38 MAPKのリン酸化が著明に抑制されることが明らかとなった。この結果は、in vitroでの我々の解析結果と一致した。現在、この薬剤によるin vivoでの腫瘍抑制効果について更に検討中であり、臨床治験への可能性に向けて米国創薬会社と議論中である。 更に、我々は染色体転座に由来する血液疾患である慢性骨髄性白血病(Chronic myelogenous leukemia;CML)において、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence resonance energy transfer;FRET)を利用した薬剤感受性診断技術を開発中である。CMLで認められるキメラ遺伝子産物BCR-ABLは恒常的活性化能を持つチロシンキナーゼであるが、そのキナーゼ活性は分子内アミノ酸変異により異なり、これは薬剤の感受性と相関する。我々は、BCR-ABL依存的に活性化しているシグナル伝達経路内の一つの分子に着目してFRETプローブを作製し、現在このプローブ特性を利用して、患者個々の薬剤感受性診断技術を開発中である。この技術は、各患者に最適な抗がん剤の選択に極めて有用な情報をもたらす他、CMLの発生に関与するシグナル伝達の解明にも寄与すると期待される。
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