2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞・樹状突起の形態形成を制御するメカニズムの解明
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18800013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千原 崇裕 東京大学, 大学院薬学系研究科, 助手 (00431891)
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Keywords | 神経細胞 / 形態形成 / 樹状突起 / 神経極性 / ショウジョウバエ / 遺伝学 / 蛋白質飜訳 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
脳のような複雑な神経ネットワークを形成する神経細胞は、それぞれ軸索、及び樹状突起といった高度に極性化した構造を有している。軸索は、細胞体から伸びた一本の細胞質突起で、一般に神経情報の出力を担っている。一方、樹状突起は、無数の細胞質突起から構成される複雑な構造を有しており、神経情報の入力を担っている。よって、神経ネットワークの形成機構を理解するためには、軸索、及び樹状突起、双方の形態形成機構を解明する必要がある。 本研究では、特にこれまで解析が困難であった樹状突起の形態形成機構の解明を目的に実験を行い、以下に示す結果を得た。まず、樹状突起の形態を生体内で1細胞レベルの解像度で可視化・解析するために、ショウジョウバエの嗅覚系2次神経・Projection Neuron(以下PNと省略)をモデル系として、遺伝学的モザイク法を用いたスクリーニングを行い、PNの樹状突起形態に異常を来す変異体を4系統回収することに成功した。更に、遺伝学的マッピング法を駆使することにより、これら4系統の原因遺伝子の同定にも成功した。現在、これら4変異体についてそれぞれ機能解析を進めている。このうちの1つの変異体の原因遺伝子は、ヒト遺伝性神経疾患Charcot-Marie-Tooth Disease Type 2D(CMT2D)の原因遺伝子Glycyl-tRNA synthetase(GARS)のショウジョウバエオソログであることが明らかになった。更に解析を進めた結果、1,gars遺伝子は二つのGARS蛋白質をコードし、一方は細胞質における蛋白質翻訳、もう一方はミトコンドリアにおける蛋白質翻訳に寄与する事。2,ミトコンドリアにおける蛋白質翻訳は、特に樹状突起の形態形成・維持に重要であり、一方、軸索の維持にはあまり関与していない事。3,CMT2D患者で確認されているgars遺伝子における突然変異のうち、少なくともE71G, L129P突然変異は機能欠失型変異である可能性が高い事、などを見いだしている。現在、樹状突起の形態に異常を示す他の変異体についても精力的に解析を進めている。
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