Research Abstract |
これまでに,本睡眠障害モデルを用いて睡眠に対するカバカバ,パッシフローラおよびカモミールなどの生薬抽出物の効果を評価した(Shinomiya et al.,Psychopharmacology, 2005; Shinomiya et al., Acta Med. Okayama, 2005; Shinomiya et al., Biol. Pham Bull.2005).その結果,カバカバ抽出物は睡眠導入作用を示すだけでなく,質の高い睡眠を誘発した(Shinomiya, et. al., Psychopharmacology, 2005).この結果は,医療現場で最も使用されている睡眠薬であるゾルピデム(マイスリー)などのベンゾジアゼピン類似薬が睡眠の質を低下させることを考えると画期的な発見であった.しかし,残念なことに,カバカバ抽出物は,多量服用により肝炎を誘発する作用が最近報告された.そこで,研究代表者は,本補助金の交付を契機として,カバカバ抽出物中の含有成分であるkavainの睡眠に対する効果を,睡眠障害モデルを用いて評価した.その結果,kavainは,睡眠障害モデルラットにおいて,睡眠導入潜時の短縮,覚醒時間の減少,NREM睡眠時間の増加および睡眠の質の指標となる脳波デルタ波活性の増加作用を示した.さらに,Kavainは,カバカバ抽出物で見られる肝臓の代謝酵素阻害作用を示さないことが報告されている(Mathews JM, et al., Drug Metab. Dispos.,2002).これらのことから,kavainは,カバカバ抽出物とは異なり,肝炎などの副作用を発症せず,さらに,睡眠導入・維持作用のみならず,睡眠の質を高める革新的な睡眠薬候補物質と考えられる.以上の研究成果は,日本薬学会第128年会で発表するとともに,平成20年度中には国際誌に報告する予定である.
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