2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18800059
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
三田 有紀子 椙山女学園大学, 生活科学部, 助手 (00410613)
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Keywords | クロム / 糖尿病 / 微量元素 / ICP-MS |
Research Abstract |
クロム(Cr)欠乏は耐糖能異常を惹き起こす。近年、糖尿病患者において尿中Cr排泄量の増加や血中Cr濃度の低下が明らかになっていることから、我々は糖尿病ではCr欠乏症を惹き起こす可能性があると考えた。本研究では、尿中クロム排泄量が糖尿病により増加する機序を解明するために、糖尿病初期段階における尿中Cr濃度および排泄量について検討した。実験動物は6週齢c57BL/6雄性マウスを供した。予備飼育後体重にぱらつきの無いよう2群に分け、一方にはストレプトゾトシン(STZ)0.1 mg/g BWを1日1回2日間連続腹腔内投与した。もう一方には、生理食塩水を同様に投与した。STZ投与後3〜5日目に採尿し、 STZ投与後6日目に採血後各臓器を摘出した。採取した尿、血漿、各臓器はマイクロウェーブで湿式分解し、ICP-MSを用いて尿中Cr濃度を測定した。 STZマウスの尿中Cr濃度は、STZ投与後3日目では尿量の増加により正常マウスの約40%であったが、その後尿量が経時的に増加するにもかかわらずSTZ投与後5日目では正常マウスの約2.6倍まで上昇した。これに伴い、尿中Cr排泄量は、 STZ投与後3日目では群間に差が認められなかったが、その後STZ投与後5日目ではSTZマウスの尿中Cr排泄量が正常マウスの約8倍となった。また、STZマウ-スでは、投与後1日目から血糖値の上昇が認められたが、腎機能の指標はいずれも正常値を示した。腎臓中Cr濃度は、 STZマウス (46.0±2.6 ng/g)が正常マウス (53.9±1.4 ng/g)と比ぺて有意に低値を示したことから、糖尿病による腎臓中Cr濃度の低下は腎機能が低下する以前に惹き起こされていることが示唆された。以上のことから、STZマウスにおいて観察された尿中Cr排泄量の増加は、主に尿中Cr濃度の上昇に起因することが明らかになり、糠尿病合併症によって腎機能が低下する以前に腎臓中Cr濃度の低下とともに惹き起こされている可能性が示唆された。
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