Research Abstract |
これまでに提案された「和音性の評価モデル」は,現在までにモデルのコアとなる部分については完成していることから,初年度は和音性モデルについて様々な側面から,その妥当性の検証を行った.そのために和音の聴取実験を行った. 被験者に転回型を含む10種類の和音(長調,短調,減和音,増和音)を聴取させ,それらの印象について評定を求めた.その結果,実験から得られた複数の印象次元についての評定値とモデルのモダリティから予測される値とは,非常に合致していた.これらの成果について「和音認知に関する心理物理モデル」という題目で情報処理学会研究報告として発表を行った.また和音の同時的および継時的提宗が印象評価に与える影響について明らかにするために,分散和音を用いた印象評価実験も行った.実験データの解析は現在進行中である.また今後の聴取実験としては,12音階に割り当てられない合成三和音についての印象評価実験を計画中である. また和音の認知メカニズムの基盤を明らかにするために,和音聴取に関するfMRI実験を亜実施した.被験者には印象評価実験と同様に,転回型を含む10種類の和音(長調,短調,減和音,増和音)を聴取させたが,音楽的文脈を保持した刺激構成とするために,それらの和音の組合せから和音推移刺激として提示を行い(例:増和音→長調),その脳活動について計測した.データを解析した結果,長調と短調,および緊張的和音(減和音と増和音)のそれぞれにおいて,前頭眼窩野,上前頭回,小脳などで賦活パターンの違いが見出された.fMRI実験については,実験データの追加とそれらの解析終了後,論文として取りまとめる予定である.
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