2006 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類における音声学習の神経機構:齧歯類を用いた研究
Project/Area Number |
18800086
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
時本 楠緒子 独立行政法人理化学研究所, 象徴概念発達研究チーム, 基礎科学特別研究員 (10435662)
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Keywords | 発声制御 / 発声学習 / 中脳水道灰白質 / 求愛歌 / 齧歯類 / デグー |
Research Abstract |
多くの動物がコミュニケーションの手段として音声信号を用いるが、言語はヒトに固有の能力である。ヒトのみが言語を持つ要因については、発声学習、シンボル操作、文法操作、文化伝達などが考えられているが、明確な答えは得られていない。本研究では発声制御と階層的操作能力の関係に着目し、社会性齧歯類デグー(Octodon degu)を用いて、言語獲得を可能にする神経メカニズムを解明することを目的としている。これまでの研究から、デグーが高度に発達した音声コミュニケーションを行うこと、発声制御訓練中、自発的に階層的操作の一種である入れ子操作を行ったことが分かっている。そこで本年度は、可塑性があると考えられるデグーの歌に着目して、発声学習を可能にする神経機構を解明することを目的とした。 主にメスを用いた電気刺激実験を行い、オスのデータと比較した。その結果、発声制御系の中心領域である中脳水道灰白質および上位領域の1つである帯状回で誘発される音声に雌雄差が無いことを確認した。中脳水道灰白質の刺激では、日常的な発声の多くが誘発されたが、歌は誘発されなかった。そのため、歌誘発部位に神経標識物質を注入して投射経路を同定する計画は実施できなかった。今後はさらに上位領域の刺激や、中脳水道灰白質と他領域の2点同時刺激を行い、歌の誘発を試みる。 また、できるだけノイズが少ない環境を整えて成体ペアの歌録音を行い、求愛歌をうたうのはオスのみであることを確認した。幼仔期には歌行動の雌雄差が見られないにも関わらず、成熟したメスがうたうのは毛繕い歌のみで求愛歌をうたわなかったことから、若齢期の発声可塑性が示された。
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