2007 Fiscal Year Annual Research Report
石造文化財と水に関する研究-溶出実験から捉えた化学的風化-
Project/Area Number |
18800094
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
脇谷 草一郎 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 企画調整部, 特別研究員 (80416411)
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Keywords | 石造文化財 / 化学的風化 / 溶出実験 / 撥水処理 / 強化処理 / 接触角 / 蒸気透過性 / 吸水率 |
Research Abstract |
本年度は新規に開発された撥水剤YMJ604およびYMJ621の評価を中心に研究を実施した。従来から日本では広く使用されている、いずれもケイ酸エステル共重合体の撥水剤SILRES BS290(Wacker社製、以下290と略記)や強化撥水剤OM20(アクト社製)などの代表的な撥水剤との比較検討をおこなった。本研究課題である溶出実験を中心として、接触角の測定や毛管現象による吸水試験、蒸気の透過性試験をおこない、さらにポリマーの塗布による変色(色差)についても検討をおこなった。その結果、新規の撥水剤では含浸による色差が大きく、特に明度が低下する、すなわち濡れ色を呈することが示唆された。接触角に関しては、YMJ604、YMJ621および290において大きく、なかでも前2者は接触角が140°超とすぐれた撥水性を示した。毛管現象による吸水試験では無処理試料(control)および強化剤SILRES BSOH100(Wacker社製)のみの試料と比較して、いずれの撥水剤においても吸水性が大きく低下しており、control試料と比較して吸水率が90%程度減少した。大きな接触角を示した290やYMJ604と比較してOM20は接触角では劣るものの、吸水率ではこれらよりも良好な結果を得た。蒸気の透過性においては撥水処理を施した試料ではいずれもが蒸気の透過性が低下する傾向を示した。なかでもYMJ621は蒸気の透過性が顕著に乏しいことか示された。また溶出実験の結果からはアルカリ金属、アルカリ土類金属の溶出に対する抑制効果は特に290、OM20、YMJ604で優れる事が示唆された。以上の結果から290に加えて、新規に開発されたYMJ604では全体的に良好な結果を得た。今後はポリマーの耐久性について検討をおこない、実用化へ向けたさらなる検討をおこなう予定である。
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Research Products
(1 results)