2007 Fiscal Year Annual Research Report
情報伝達蛋白質Raf1の分子内構造変化と活性調節の相関の細胞内1分子可視化解析
Project/Area Number |
18810042
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
日比野 佳代 The Institute of Physical and Chemical Research, 佐甲細胞情報研究室, 協力研究員 (40435673)
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Keywords | 生物物理 / 1分子可視化解析 / 細胞内情報伝達 / セリン / スレオニンキナーゼ / 分子内構造変化 / 緑色蛍光蛋白質 / Ras / Raf |
Research Abstract |
細胞の増殖や分化に関わる重要な細胞内情報伝達反応の一つ低分子量G蛋白質Rasからセリン/スレオニンキナーゼRaflへの情報伝達反応の分子機構を明らかにするため、Raflの活性調節に重要だと考えられている分子内構造変化を、昨年度開発に成功した1分子可視化解析システムを用いて、生きた細胞内で計測した。Raflの構造変化プローブは、2色の蛍光タンパク質の間で起こる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したプローブで、Raf分子の球状態から鎖状態への構造変化をFRET信号の変化として検出することができる。このRaf分子の構造変化プローブをHeLa細胞に発現させ、生きた細胞内で1分子毎に可視化解析して、上皮成長因子(EGF)刺激前後の、Raflの構造を計測した。 この結果、不活性化型Ras(RasGDP)と結合したRafと、活性化型Ras(RasGTP)と結合したRafでは、初期結合の状態が大きく異なることを明らかにした。また、細胞質中に存在するRafや、細胞膜のRasGDPと結合したRafは球状態をとり、RasGTPと結合したRafは球状態から鎖状態へと直ちに構造変化することが示唆された。これらの結果により、「活性化型Rasは、Rafの単なる高親和性結合部位として働くのではなく、Rafの構造変化を誘導し、その活性制御を直接的に行う」というRasによる新しい情報伝達反応の制御機構を提案し、この成果を、2007年12月、日本生物物理学会第45回年会、及び、2008年2月、Joint Meeting of the Biophysical Society 52nd Annual Meeting & 16th International Biophysics Congress(IUPAB)で発表した。
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